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ドクターズブログ

開咬(かいこう、オープンバイト)の症状や原因、リスクと治療法

開咬(かいこう)とは

症状:連続した数歯にわたって噛んでいない状態、オープンバイトとも言われる。

具体的にはこんな状態です。上顎前突、下顎前突は水平方向の不正です。開咬は垂直方向の不正になります。開咬の上顎前突、開咬の下顎前突、開咬の叢生と言ったぐあいになります。

この患者様20代の女性の方です。前歯が王冠状にギザギザなっています。犬歯も尖っています。これは前歯が萌出してから噛んだ事がない証拠です。正確には6歳から噛んでいない事になります。生えてきた時にはこのギザギザは必ずあります。

実は乳歯列の患者様に開咬はほとんどいません。どうしてか?というと乳歯は前歯から生えてくるからです。そこで前歯が開咬になっているという事はありません。永久歯にはえ替わる時期にこの患者様の不正咬合は起きたのではないか?と考えられます。それは前歯のはえかわりの時期(6歳から7歳)と同じくして一番奥に第一大臼歯が生えて来ます。私はこの時期にしっかりとした正常な咀嚼・嚥下・発語ができていないとこのような開咬が起きると考えています。この患者様も第一大臼歯は噛んでいます。それよりも前方の歯は噛んでいません。

開咬の治療が難しいとされる理由は原因が多岐にわたって存在し、それらが複雑に絡み合っています。

開咬になってしまう原因

異常嚥下癖(いじょうえんげへき)

この開咬の方は後輩の歯科医です。以前はこういった研究を大学院生としていました。ボランティアでX線映画を撮影させて頂きました。Aを見て頂くと前歯が開咬なのがよくわかります。黒く下向きの半円状に写っているのはバリウムを入れて固めた寒天です(白い矢印)。この寒天を食べてもらいました。Bの写真では寒天を舌との間でつぶしています。そしてCではつぶして泥状になった寒天を後方に送っています。Dではそれを舌の後方に送るのですが、舌は前歯の開咬部分に突き出してきているのがわかると思います。これが異常嚥下癖です。舌が前歯の隙間を封鎖すように前に出てきています。舌が邪魔して前歯が噛み合わせる事ができません。さらに下唇やその下のオトガイ部に緊張ができます。“梅干しができる”と言われるています。舌が口蓋に上がるかというのも一つの判定になります。

飲み込んで頂いた後にすぐの舌を見せ頂きました。くっきりと舌に前歯の裏側の痕がついています。これが異常嚥下癖です。正常な方は、飲み込むという動作をした時に舌は歯には触れません。

正常嚥下

正常な嚥下では食塊を舌の上に集めると同時に上下の歯を噛んですばやく喉へ送ります。一瞬ですが噛み合わせます。舌はその時は口蓋(お口の中の天井)についています。従って歯に触れる事はありません。

指しゃぶり、拇指吸引癖

乳幼児によく見られる。強い力で親指を吸う。指にタコができている。3歳児程度までならこれはむしろ正常な行為です。しかし、この時期を過ぎて長期化する上顎前突、開咬の原因になります。また上顎歯列が狭くなります。

低位舌(ていいぜつ)

舌の位置を緑の線で口蓋を赤い線で表して見ました。舌尖は前歯の間にあります。異常嚥下癖よりも舌の位置の異常を開咬の原因とする矯正歯科医は多くいます。なぜか?というと嚥下を1日に800回おこなったとしても前歯を押している時間は1回1秒もありません。それが800回で長く見ても800秒です。これで歯が移動するか?と言えば無理です。しかし、低位舌なら歯に長時間触れています。しかも舌がその位置に1日のほとんど時間あるとすれば、これが原因だと考えるのは妥当な事です。しかし、低位舌の方はほとんどの方が異常嚥下癖伴っています。

巨大舌症

舌が大きな場合も開咬になります。これは大変珍しい例です。状態によっては舌を小さく切除する場合もあります。

 

骨格の問題

 

開咬は垂直方向の異常です。水平方向の異常ではありません。水平方向というのは上顎前突(出っ歯)、下顎前突(反対咬合、受け口)などがこれになります。しかし、開咬は上下方向、垂直方向の異常になります。従って開咬の上顎前突、開咬の反対咬合というのがあります。

 

開咬の特徴な骨格は顔が長い、そして下顎骨の下縁の角度が大きいとう特徴があります。顔の短い方は開咬にはなりにくいです。

 

歯の問題

上下前歯が前方に傾斜しています。前方へ傾斜した結果、前歯部が開いたという事になります。従った治療には後方傾斜させるという事を行います。

 

アデノイド顔貌

今では大変珍しくなりました。長期間にわたって慢性的にアデノイドの肥厚が見られる場合は鼻呼吸ができなくなります。そこで口呼吸をします。そのため口はいつも開けた状態になり顔が長くなります。お口の中は低位舌になり開咬になります。

アデノイドはリンパ組織です。リンパ組織は12歳ぐらいに成人の2倍近い大きさになります。しかし、その後に小さくなります。この組織はセファログラム(側面頭部X線規格写真)から確認できます。アイ矯正では必要があれば耳鼻科の先生に依頼します。アデノイドは耳鼻科の領域になります。

開咬を放置しておくとどうなる?リスク

歯は消化器官の入り口です。食物を噛み砕いて唾液のまぜます。開咬ではそれができません。噛んでいる歯が少ないのでかなり効率の悪い状態になっています。不完全なまま嚥下している事が考えられます。正常な咀嚼、嚥下がおこなわれていません。食べ物を丸のみしているはずです。食べ物をよくこぼす。唾液が口から垂れてしまう。などの症状がでてしまいます。また発語、発音に問題があります。“早口でしゃべるとわからないと言われる”、“舌足らずだと言われた”など聞き取りにくいと相手に言われる事があるはずです。サ行やタ行が言いずらい。聞き取りにくいなどもあります。口唇に力を入れて閉じるために下顎のオトガイ部に梅干しのような筋肉の緊張が生じます。

前歯などを使用していないために歯根吸収している事があります。また歯を支持している歯周組織は噛んでいると強いのですが、噛んでいない歯ではその支持力が著しく低下してしまいます。臼歯部だけしか咬合していないために臼歯だけに強い力が加わってしまいます。

治療法

筋機能療法(myofunctional therapy)

これら舌や口腔周囲筋の異常な動作を治療するのが筋機能療法です。アイ矯正ではそれぞれの患者様に担当の歯科衛生士決めて、飲み込み方や舌の位置などを指導しています。毎回目標を決めてチェックしています。

ブラケットによる治療

抜歯症例になる事が多いです。それは開咬の患者様の特徴に上下の前歯が前方に傾斜している方が多いです。そこで上下前歯を内側に傾斜させる事によって噛ませます。また上下顎でゴム牽引をします。これをしないと治りません。

成人開咬患者様の実際の治療

典型的な前歯部開咬です。臼歯部しか咬合していません。前歯部が噛んでいない事、口もとが出ている事(主訴)をリンガルブラケットでの治療を希望されて来院されました。

骨格も開咬になりやすい顎の形態をしていました。上下前歯は前方に傾斜していて口もとは出ています。

そこで上下左右の第一小臼歯を4本を抜歯してリンガルブラケットを用いて治療を開始しました。

開咬の治療には必ず上下でゴム牽引をします。これをしなければ噛んで来る事はありません。

抜歯した第一小臼歯のスペースは閉鎖しました。前歯部も噛んでいます。

ここまでの治療に31か月を要しました。治療前後の重ね合わせを示します。赤が現在です。上下前歯が後方に傾斜する事で噛んで来ています。口もとが後退しました。たいへんよい状態です。

早期治療がよい結果につながります。矯正治療開始は7歳がベスト

あらゆるタイプの不正咬合に言える事でもあります。矯正治療の開始時期は7歳がベストです。6歳頃に6歳臼歯、第一大臼歯がはえてきます。これは第二乳臼歯の後方にはえてきます。はえ変わりではなく新しくもっとも後方にはえてきます。さらにその時期に前歯がはえかわってきます。開咬患者様もこの時期から咀嚼、嚥下などのトレーニングを行ってスムースに成熟した嚥下動作ができるようになればベストです。乳歯のはえかわりは将来の歯並びに大きく影響します。

 

アイ矯正はリンガルブラケットの専門歯科医院といった点では知られた存在ではあります。これはリンガルブラケットでの治療は私ども歯科医としてのキャリアと同じです。30年以上の経験があります。患者様の多くがこの治療法を選択されるのでリンガルブラケット専門となってしまいましたが、お子様からの治療は大変重要視しています。ご相談ください。対応できます。

 

舌の動きのおもしろい話

1990年頃の遺伝学の本からの抜粋です。本のタイトルはGenetic Principles Human and Social Consequencs と言います。この本を見つけたのは私がシカゴのイリノイ州立大学シカゴ校矯正学講座顎顔面遺伝学教室(UIC)に留学していた時に大学の古本屋で偶然購入した本の1ぺーじです。その頃は分子生物学を勉強したくて古本屋さんで初期の分かりやすい本を探していました。UICはシカゴのあるイリノイ州で唯一の歯学部です。以前はノースウエスタン大学やロヨラ大学にもありましたが閉鎖されました。

 

この部分を読んだ時に驚きました。その後に同僚に舌をロールしてもらいましたが、確かにほとんどの人ができますが、中にはどうしてもできない人がいました。この赤いラインで引いてある部分ですが、これができる方が85%、その他の人は舌の横方向のコントロールをしている遺伝子がもともとないのできないようです。こんな事が調べられている事に驚きました。

 

筋機能療法にもに影響するか?こういった遺伝子による制御をもしかすると受けているのかもしれません。残念ですがそれ以後この分野の研究がどうなったか?という事は私は知りません。大変興味深い記事なので掲載しました。

治療例

治療例No.208 開咬 筋機能訓練 ポッピング

治療例No.181 開咬 open bite 難症例

治療例No.111 反対咬合 開咬 八重歯

 

私は開咬を研究していました。

論文

成人開咬者と個性正常咬合者の咀嚼・嚥下時における口腔周囲筋筋活動の比較. Orthodontic Waves 2000;59(5):352-363(日本矯正歯科学会誌)

 

成人前歯部開咬者の食塊形成能力に関する研究-異なる食品における咀嚼終了時の食塊について-. 鶴見歯学2004;30(2):119-125.

 

成人開咬者の咀嚼運動解析-物性の異なった食品を咀嚼した時-. 鶴見歯学2003;29(1):13-21.

学会発表

Open bite correction with the multi-lingual bracket system. 76th Congress of the European Orthodontic Society. Creta Maris Hotel Congress Center, Greece, 2000.6.12-13.

 

成人開咬者の食塊形成能力に関する研究.63回日本矯正歯科学会大会,福岡国際会議場,20041117,19.

 

成人開咬者が物性の異なった食品を咀嚼・嚥下した時の咀嚼筋およ口腔周囲筋の筋活動の比較.鶴見歯学会題55回例会,鶴見大学大学会館メインホール,2002615.

 

成人開咬者が物性の異なった食品を咀嚼・嚥下した時の咀嚼筋および口腔周囲筋筋活動の検討.60回日本矯正歯科学会大会,3回国際会議,東京国際フォーラム,2001108,11.

 

成人開咬患者と正常者の咀嚼・嚥下時における口腔周囲筋筋活動の比較.59回日本矯正歯科学会大会,大阪国際会議場,20001025,27.

 

成人開咬患者と個性正常咬合者の咀嚼嚥下時における口腔周囲筋筋活動の比較.第58回日本矯正歯科学会大会,広島国際会議場,1999年1014,15.

 

成人開咬患者の咀嚼・嚥下時における顎口腔筋の筋活動.57回日本矯正歯科学会大会,仙台国際センター,1998101,2.

 

成人開咬患者の嚥下時における顎口腔筋の筋活動.第55回日本矯正歯科学会大会,シーホークホテル&リゾート福岡,19961017,18.

 

上記研究で大変だったのは条件を満たした開咬の方が大変少ないという事です。被検者を集めるのが大変でした。今のアイ矯正にはたくさんの開咬患者さまがいます。皮肉なものですが、これら研究で得た経験は役に立っています。

 

 

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