乱杭歯(叢生・八重歯)とは?
八重歯とは、犬歯と呼ばれる上あごの中心から左右3番目の歯が歯列から上に、あるいは外に飛び出してしまっている状態を指します。同様の状態を指して、叢生や乱杭歯と呼ぶ場合もあります。
八重歯は八に重なる。8は縁起の良い数字です。日本ではとてもよい言葉になります。また、「八重歯はかわいい」といった印象を持たれることもあるようです。しかしながら実際には歯が重なっていてブラッシングできない部分があったりします。
矯正歯科の立場から気になる点として、治療の際に歯科矯正治療ではなく、歯を削り被せものをする治療を選ばれるケースが多い点です。歯の神経をとって削り、セラミックやジルコニアを被せることは、歯の健康にとってはよくありません。歯の寿命も短くなります。
八重歯になってしまう原因
八重歯はもとは犬歯です。まず6歳ぐらいから前歯のはえかわりが始まります。そして同時期に第一大臼歯が一番後方にはえてきます。そこで “ 6歳臼歯 ” と呼ばれます。約50%以上が犬歯(前から3番目)よりも後方の小臼歯(4番目、5番目)がはえてきます。歯の大きさと並ぶべき骨の場所に不調和のある患者様は犬歯が排列できすに高い位置ではみ出した位置に留まってしまいます。これが八重歯です。歯の萌出順序が大きく関わっています。
まとめると、歯が並ぶべき顎骨のスペースと歯の歯冠部の大きさとの間のバランスが取れていない。歯の大きさが並ぶ場所よりも大きな場合に起きます。歯が排列する事ができずにでこぼこした状態になります。
八重歯を放置しておくリスクとは?
八重歯のある高校生や中学生を見かける事はあります。でもなぜでしょう?八重歯のあるお婆さん、お爺さんはいないと思いませんか?確かにと思われるのではないでしょうか?
八重歯(犬歯)は放置すると後述するようなリスクがあるため、矯正治療でなくとも抜かれてしまう方が多いようです。
八重歯をそのままにしておくとどうなの?
左側の女性は20代の八重歯の患者様です。右側は50代の患者様です。八重歯は外側にふくらんで出っぱっています。そのために歯茎は薄くおおっているだけです。力ずよくブラッシングしたり、加齢が原因で歯茎の被覆が減少して行きます。歯根が露出してきます。こうなると矯正治療しても歯茎はもとどおりには再生しません。
周りの歯もブラッシングが届かないためにう蝕で治療されていています。八重歯は口腔衛生に悪い事が理解できると思います。
加齢とともに唾液の分泌量が減り、口内を傷つける
特に女性の方ですが中高年になると唾液の分泌量が減ります。そうして乾燥した口内において、八重歯は犬歯で鋭角な部分が目立つため、唇を傷つけてしまう方がいます。
ドライマウスの患者様を裏側からリンガルブラケットで治療した事がありますが、唾液がほとんどでないことにより八重歯で唇を切ってしまう、あるいは唇が張り付いて降りてこない、閉じられないとの事が起きていました。このような場合、表側から治療すると今度はブラケットで唇を切ってしまうこととなります。裏側矯正が適した患者様でしたので、大変感謝していただき、私も達成感のある治療でした。
治療法(治療例)
八重歯は犬歯です。その犬歯の後方には第一小臼歯、第二小臼歯と形態、機能も同じ小臼歯が2本あります。そのために小臼歯のどちらかを抜歯する事になります。
犬歯は歯根は長い
八重歯(犬歯)を抜歯して矯正治療するのは稀な事です。その理由は犬歯は歯が長いからです。
黄色の丸で囲みました。周囲の歯に比べて犬歯の歯根が長い事がわかります。歯根が長いという事は寿命も長いという事になります。そこで八重歯は抜きません。他にも形態が矢じり状で特殊である事、下顎を側方にずらした時のガイドになる重要な歯でもあります。
八重歯は治ります!
この患者様は小学校6年生でした。八重歯の後方の第二小臼歯を抜かしていただいて治療しました。八重歯は治ります。八重歯の患者様も軽度であれば小臼歯を抜歯せずに治療が可能です。抜歯する場合はリンガルブラケットを使用した治療した時は第二小臼歯(前から5番目)を選択する場合が多いです。一般的な表側からの治療では第一小臼歯(4番目)を選択する事が多くなります。