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ドクターズブログ

開咬(オープンバイト)とは?原因やリスク、治療について

開咬(かいこう)オープンバイトとは

開咬とは、連続した数歯にわたって噛んでいない状態をさし、オープンバイトとも呼ばれています。

具体的にはこちらの写真のような状態です。上顎前突、下顎前突は水平方向の不正咬合となりますが、開咬は垂直方向の不正咬合になります。開咬の上顎前突、開咬の下顎前突、開咬の叢生と言ったぐあいにその他の症状と同時に発生しているケースも多くあります。

この患者様20代の女性の方ですが、前歯が王冠状にギザギザなっており、犬歯も尖っています。これは前歯が萌出してから噛んだ事がない証拠です。生えてきた時にはこのギザギザは必ずあります。

開咬の矯正治療が難しいとされる理由は原因が多岐にわたって存在し、それらが複雑に絡み合っています。

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開咬(オープンバイト)になってしまう原因

異常嚥下癖(いじょうえんげへき)

異常嚥下癖とは、嚥下(ものを飲み込む)の際に舌が前歯を押し出すように強く触れての飲み込む状態を言います。正常な嚥下では食塊を舌の上に集めると同時に、舌は口蓋との間に密閉した状態を作り、上下の歯を噛んですばやく喉へ送ります。歯に触れる事はありません。

この開咬の方は後輩の歯科医です。以前はこういった研究を大学院生としていました。ボランティアでX線映画を撮影させて頂きました。Aを見て頂くと前歯が開咬なのがよくわかります。黒く下向きの半円状に写っているのはバリウムを入れて固めた寒天です(白い矢印)。この寒天を食べてもらいました。Bの写真では寒天を舌との間でつぶしています。そしてCではつぶして泥状になった寒天を後方に送っています。Dではそれを舌の後方に送るのですが、舌は前歯の開咬部分に突き出してきているのがわかると思います。舌は上方に上がっていません。これが異常嚥下癖です。舌が前歯の隙間を封鎖すように前に出てきています。舌があるので上下前歯が噛み合わせる事ができません。さらに下唇やその下のオトガイ部に緊張ができます。“梅干しができる”と言われるています。舌が口蓋に上がるかというのも一つの判定になります。

飲み込んで頂いた後にすぐの舌を見せ頂きました。くっきりと舌に前歯の裏側の痕がついています。これが異常嚥下癖です。正常な方は、飲み込むという動作をした時に舌は前歯には触れません。

指しゃぶり、拇指吸引癖

強い力で親指を吸う。指にタコができている。3歳児程度までならこれはむしろ正常な行為です。しかし、この時期を過ぎて長期化する上顎前突、開咬の原因になります。小学生になってもおこなっているようなら要注意です。すごく強いち力で指を吸うので、指が入るような歯列、上顎前突、開咬、上顎の狭窄歯列になります。ただやめなさいというよりも“どうして吸っているのか”本人と話会うのが重要です。例えば、兄弟が生まれて両親がかまってくれない。その寂しさでおこなっている場合もあります。動機の確認は重要です。注意しただけだと隠れておこなう。あるいは他の物を吸ったりする癖に移行するだけの事があります。

低位舌(ていいぜつ)

舌の位置を緑の線で口蓋を赤い線で表して見ました。舌尖は前歯の間にあります。異常嚥下癖よりも舌の位置の異常を開咬の原因とする矯正歯科医は多くいます。なぜか?というと嚥下を1日に800回おこなったとしても前歯を押している時間は1回1秒もありません。それが800回で長く見ても800秒です。これで歯が移動するか?と言えば無理です。しかし、低位舌なら歯に長時間触れています。しかも舌がその位置に1日のほとんど時間あるとすれば、これが原因だと考えるのは妥当な事です。しかし、低位舌の方はほとんどの方が異常嚥下癖伴っています。

巨大舌症

舌が大きな場合も開咬になります。これは大変珍しい例です。状態によっては舌を小さく切除する場合もあります。

 

骨格の問題

 

開咬は垂直方向の異常です。水平方向の異常ではありません。水平方向というのは上顎前突(出っ歯)、下顎前突(反対咬合、受け口)などがこれになります。しかし、開咬は上下方向、垂直方向の異常になります。従って開咬の上顎前突、開咬の反対咬合というのがあります。

開咬の特徴な骨格は顔が長い、そして下顎骨の下縁の角度が大きいとう特徴があります。顔の短い方は開咬にはなりにくいです。

 

歯の問題

上下前歯が前方に傾斜しています。前方へ傾斜した結果、前歯部が開いたという事になります。従った治療には後方傾斜させるという事を行います。

 

アデノイド顔貌

今では大変珍しくなりました。長期間にわたって慢性的にアデノイドの肥厚が見られる場合は鼻呼吸ができなくなります。そこで口呼吸をします。そのため口はいつも開けた状態になり顔が長くなります。お口の中は低位舌になり開咬になります。

アデノイドはリンパ組織です。リンパ組織は12歳ぐらいに成人の2倍近い大きさになります。しかし、その後に小さくなります。この組織はセファログラム(側面頭部X線規格写真)から確認できます。アイ矯正では必要があれば耳鼻科の先生に依頼します。アデノイドは耳鼻科の領域になります。

詳しくはこちら:アデノイド顔貌とは?矯正専門医が原因と治療法を解説

 

開咬を放置しておくとどうなる?リスク

不完全なまま嚥下してしまう

歯は消化器官の入り口で、食物を噛み砕いて消化を助ける働きがありますが、開咬ではそれができません。噛んでいる歯が少ないのでかなり効率の悪い状態になっており、不完全なまま嚥下している事が考えられます。食べ物をよくこぼす。唾液が口から垂れてしまう。などの症状がでてしまいます。

発語、発音への影響

また発語、発音に問題があります。“早口でしゃべるとわからないと言われる”、“舌足らずだと言われた”など聞き取りにくいと相手に言われる事があるはずです。サ行やタ行が言いずらい。聞き取りにくいなどもあります。また舌が長いなどと言われる人もいるようです。舌が前方に突出するために上下口唇に力を入れて閉じる。そのために下顎のオトガイ部に梅干しのような筋肉の緊張が生じます。

歯の支持力が著しく低下してしまう

前歯などを使用していない。噛んでいないために歯を支持している歯周組織が弱く成っている。萎縮してしまっている状態です。重篤な場合は歯根が短くなっている場合もあります。噛んでいる事は重要です。また臼歯部だけしか咬合していないために臼歯だけに強い力が加わってしまいます。臼歯部が過剰に咬耗している事もあります。

治療法

筋機能療法(myofunctional therapy)

舌や口腔周囲筋の異常な動作を治療するのが筋機能療法です。アイ矯正ではそれぞれの患者様に担当の歯科衛生士決めて、飲み込み方や舌の位置などを指導しています。毎回目標を決めてチェックしています。

ブラケットによる治療

抜歯症例になる事が多いです。それは開咬の患者様の特徴に上下の前歯が前方傾斜があります。そこで上下前歯を内側に傾斜させる事によって噛ませます。また上下顎でゴム牽引をします。噛ませるという行為は今でもゴム牽引しか方法がありません。

成人開咬患者様の実際の治療

診断名過蓋咬合
治療法リンガルブラケット
年代20代
性別女性
治療期間30ヶ月
リスク歯の移動に伴う動揺や歯肉退縮
費用費用:約135万円(税込)

典型的な前歯部開咬です。臼歯部しか咬合していません。前歯部が噛んでいない事、口もとが出ている事(主訴)をリンガルブラケットでの治療を希望されて来院されました。

骨格も開咬になりやすい顎の形態をしていました。上下前歯は前方に傾斜していて口もとは出ています。

そこで上下左右の第一小臼歯を4本を抜歯してリンガルブラケットを用いて治療を開始しました。

開咬の治療には必ず上下でゴム牽引をします。これをしなければ噛んで来る事はありません。

抜歯した第一小臼歯のスペースは閉鎖しました。前歯部も噛んでいます。

ここまでの治療に31か月を要しました。治療前後の重ね合わせを示します。赤が現在です。上下前歯が後方に傾斜する事で噛んで来ています。口もとが後退しました。たいへんよい状態です。

早期治療がよい結果につながります。矯正治療開始は7歳がベスト

あらゆるタイプの不正咬合に言える事でもあります。矯正治療の開始時期は7歳がベストです。6歳頃に6歳臼歯、第一大臼歯がはえてきます。これは第二乳臼歯の後方にはえてきます。はえ変わりではなく新しくもっとも後方にはえてきます。さらにその時期に前歯がはえかわってきます。開咬患者様もこの時期から咀嚼、嚥下などのトレーニングを行ってスムースに成熟した嚥下動作ができるようになればベストです。乳歯のはえかわりは将来の歯並びに大きく影響します。

 

アイ矯正はリンガルブラケットの専門歯科医院といった点では知られた存在ではあります。これはリンガルブラケットでの治療は私ども歯科医としてのキャリアと同じです。30年以上の経験があります。患者様の多くがこの治療法を選択されるのでリンガルブラケット専門となってしまいましたが、お子様からの治療は大変重要視しています。ご相談ください。対応できます。

 

裏側矯正(舌側矯正)に関してのより詳しい解説はこちら

 

治療例

治療例No.208 開咬 筋機能訓練 ポッピング

治療例No.181 開咬 open bite 難症例

治療例No.111 反対咬合 開咬 八重歯

開咬についてよくある質問

このままにしておくとどうなりますか?

開咬の患者様は食べ物をよく噛まずに嚥下しています。消化器官としてもっとも重要な咬合が失われています。よく噛んで食べるという事ができません。いわゆる丸飲みといったイメージです飲み込みます。胃腸は大丈夫なのか?と心配です。

小臼歯などを抜歯する必要はありますか?

開咬の患者様は口もとの突出を同時に悩んでいる事が多いです。前歯が前方に傾斜しているために上下顎前突、前歯が噛んでいない前歯部開咬の場合は第一小臼歯(前から4番目)の歯を抜歯して前歯を後方に移動させる事で口もとの改善と同時に前歯を咬合させる事が重要になります。きれいな横顔になります。

リンガルブラケットで治療は可能ですか?

表側からの一般的なブラケットによる治療に比べてリンガルブラケットは開咬の治療に有利です。作用点が前歯を内側にあります。これが歯の内側への移動を助けてくれます。唇による内側への圧力を治療に生かせます。舌が前方に突出しようとするのも防ぎます。良いことだらけです・

 

 

【開咬(オープンバイト)の治療について】

治療内容 : リンガルブラケットを用いた舌側矯正

治療費総額:135万円~155万円(税込)

※上記は標準的な費用です。保険適用外の自由診療となります。

治療期間 : 12か月~36ヶ月(症状や抜歯の有無によって異なる)

 

【リスク、副作用について】

・歯根吸収(歯根が吸収され短くなる)や歯肉退出(歯肉が下がる)が起こることがあります。

・ブラケットの周りにプラークが付着することにより、虫歯になりやすくなる場合があります。

・矯正治療中は歯の移動に伴い、動揺が起こる場合があります。一般的に移動が終了し2週間程度で解消いたします。

・矯正器具の装着に伴い、違和感や痛みを感じる場合があります。当院ではワックスやガードによる保護を行っています。

 

福井 只美
 

このブログの執筆者
福井 只美医師(日本矯正歯科学会指導医・認定医)

リンガルブラケットについては長年の経験があり、
自身で開発したダブルワイヤーテクニックを用いた治療を得意としております。                
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