大臼歯をすでに失っている患者様
成人矯正の患者様が多いアイ矯正には大臼歯をすでに失っている患者様が多く来院されます。前回は第三大臼歯(親知らず)を活用する事によって、大臼歯の欠損をおぎなう事ができる例について記載しました。ところが残念な事に、すでに第三大臼歯を抜かれている場合があります。今日はこの事について記載させて頂きます。
第三大臼歯(親知らず)だからという事ですでに抜かれている。あるいはもともと第三大臼歯がない、形態が悪い方もいます。若い頃には矯正治療をお考えでなかったのかもしれません。
30代の男性の患者様です。口元が出ている事を気にされて来院されました。そして下顎の左側第一大臼歯、第二大臼歯そして第三大臼歯(親知らず)も抜かれていてありません。手前の歯は小臼歯です。この状態では上顎に大臼歯があっても噛む相手がいません。ほっておくと上の歯が垂れ下がって来てしまいます。その結果、下顎の欠損部に入れ歯やインプラントなどを入れるスペースがなくなってしまいます。上の大臼歯も噛んでいる歯がないので歯周組織が弱く成ります。使っていないと体の部位は弱く成ってしまいます。これは歯についても言えます。
この状態だと前歯を後方に牽引する事ができません。前歯を排列してさらに後方に牽引するにはその固定になる部分が必要です。よくセカンドオピニオンで部分矯正を他医院でおこなっている患者様の質問に”口元を下げたいのに下がらない”。”奥に引っこめたいのに出てしまった”と言うのがあります。これは臼歯部から牽引しなければならないので前歯にしかブラケットのついていない部分矯正では改善できません。それどころかデコボコが排列すれば、さらに前歯は前に出ていってしまいます。
この患者様も前歯を並べたい、出ている口元を後方に下げたいといった希望があります。しかし、これでは前歯を引っ張るための固定源になる歯がありません。そこでこういった時にはインプラントの埋入をお勧めします。
黄色い丸で囲っているのがインプラントです。手前の第二小臼歯とのあいだに隙間があります。この場所を利用して歯を排列したり前歯を後方に移動したりします。これはインプラントの専門歯科医に埋入を依頼させて頂きました。私ども矯正歯科医にはできません。CTで神経の位置を確認して埋入する位置については私どもと相談して決めます。もちろんこのインプラントは治療後に大臼歯として使う事も可能です。治療中は仮の歯を入れてもらっています。最終的な歯は治療後、位置が安定したた後に作って頂きます。このインプラントは治療後にも使用するので無駄にはなりません。動かないので固定源としては最良です。
最近では矯正用インプラント、アンカースクリュウという言葉をご存知の方も多くいると思います。あれは治療が終われば取り除かれて捨ててしまいます。あれとは違います。アイ矯正では使用していません。必要ないのともったいないからです。
矯正歯科医はお口の中全体の事を考えて、患者様それぞれにとって最も適した治療法を提案させて頂きます。
リンガルブラケットを用いた治療例
治療例No.213 う蝕による欠損歯が多い 叢生 口もとの突出
治療例No.173 大臼歯を喪失したために深い噛み合わせになった症例