過蓋咬合とは?
“蓋”この字は“ふた”と読みます。過蓋咬合は“蓋が過ぎる”蓋がかぶさったような歯並びを言います。これは上顎前突(出っ歯)の分野に入ります。出っ歯というと上顎前歯が前方に傾斜しているイメージをお持ちだと思います。過蓋咬合は深いかみ合わせで出っ歯とは違うと思われる事でしょう。しかし、これもれっきとした上顎前突の仲間です。
過蓋咬合になってしまう原因
顎の骨格
Aは下顔面高(かがんめんこう)と言います。Bは下顎下縁平面角(かがくかえんへいめんかく)と言います。
骨格性の過蓋咬合の患者様はこの下顔面高が小さいです。下顎下縁平面角も小さいです。それによってかみ合わせが深くなります。遺伝的か?と言われるとお顔立ちがご両親に似ているという点では影響はあります。
歯が原因
下顎の前歯を正面から見る事ができません。
特徴的なのは上顎前歯がお辞儀したように後方に傾斜しています。後方に傾斜しているとかみ合わせはドアを閉じたように深くなります。左図に示している角度は約77°しかなく、日本人の平均値は104.34°である事を考えると約30°も小さくなっています。前歯が内側に傾斜しているとかみ合わせは深くなります。
この患者様の治療経過をご覧頂きます。最初は下顎だけ治療していました。上顎にリンガルブラケットを装着したところです。
下顎にはオープンコイルスプリングが装着されています。
上顎第一小臼歯を抜歯しました。
上顎前歯を内側に移動しています。
最後のワイヤーを装着したところです。来月には装置をはずします。治療期間は31か月でした。
クリアタイプのリテーナーを装着したところです。
治療法
過蓋咬合はリンガルブラケットでは治療できないと言われています。それは上顎前歯の裏側にブラケットを接着すると下顎前歯のぶつかってしまうからです。実はそれは最初だけです。すぐに上顎前歯にもブラケットが装着できるようになります。アイ矯正歯科クリニックにはこうした他の医院で断られた患者様が多く来院されます。これは私どもの役目だと認識しています。
下顎前歯の圧下
深い噛み合わせを治療するには下顎前歯を下にさげる必要があります。これを圧下すると言います。深いかみ合わせになっているのは下の前歯が上方に伸びあがっているためです。そこで下にさげます。
治療前後の重ね合わせで評価してみます。下顎前歯が下方に移動している事がわかります。骨にめり込んで埋まるという事はありません。下顎前歯の移動とともに骨も変化します。過蓋咬合の治療では下顎前歯の圧下が起きるのが定番です。
上顎前歯の前方傾斜
深い噛みあわせの原因の中に上顎前歯が過度に内側に傾斜している場合があります。これは前方に傾斜させる事で解決できます。
そのままにしておくとどうなるの?リスク
あまりにひどくなると下の歯は上の口蓋の粘膜と噛むようになります。次第に粘膜に歯の痕がつきます。さらに進むと骨に痕がつき、骨が削れているような状態になっている患者様もいます。深い噛み合わせのために下顎が自由に動けない状態が長く続くのもよくありません。下顎を前方に出す事ができません。