保定とは
保定とは矯正治療によって動かした歯および顎をその状態に保持する事。保定は後戻り(リラップス)を防止する。
ブラケットを装着して歯を動かす治療を動的処置と言います。その後におこなうのが保定です。保定の定義は動かした歯を一定期間とどめるということです。しかし、実際には保定には終わりがありません。どこまで保定装置(リテーナー)装着していれば後戻りしないか?という事はいまだに明確になっていません。以前は矯正治療の終わりは保定後です。しかし、今は保定には終わりがない。というのが矯正歯科医の考えです。よくブラケットがはずれたら矯正治療は終わりだと思っている患者様はいます。それは真実ではありません。
アイ矯正歯科クリニックでは保定期間を4年と設定しています。4年間の間は3か月、4か月に1度の来院をして頂いています。4年後からは自己管理に移って頂きます。ご自身で保定装置を装着して頂いて管理して頂きます。継続的に半年に1度の割合で通って来られる患者様もいます。
保定中に起きる変化 セトリング(teeth settling)
矯正治療はミリ単位で歯を動かす事が可能です。そして歯並びが改善します。しかし、ミクロン単位の調整はできません。大きく動かせますが、1000分の1ミリ単位ミクロンでの調整はできません。“かみ合わせがよくなると思って矯正治療を始めたのに治らないのですか?”そうではありません。もっとも精密に歯を動かせるブラケットを使用した装置でも1000分1ミリまで精確にコントロールする事は不可能です。ワイヤーの弾力性を矯正力として歯を移動させるているからです。コントロールできないわずかな領域が存在します。それが数ミクロンです。ではどうやってかみ合わっていくのでしょうか?実は保定中に歯はかみ合ってきます。この現象をセトリングと呼びます。保定装置で歯の位置を維持しておきます。ブラケットと違って保定装置は歯を移動した位置に保つのが役割です。歯はわずかなら移動できます。自然に噛んできます。従って保定期間中によくなってきます。ブラケット除去時は噛んでいない事もあります。またそういった状態にわざとする場合があります。最後は本来そなわっている人の噛むという力を引き出します。そういった意味でも矯正治療の終わりは保定終了時です。私の師がよく患者様に説明していたのを思い出します。“矯正はミリで動かせるけれどミクロンはできないからね。ブラケットがはずれたらジワジワと歯は自分で動いてよい位置に噛むからね”。これは事実です。矯正治療でかみあわせがよくなるのは保定終了した後です。セトリングと後戻りは違います。
保定装置の種類
可撤式保定装置(自分で装着、取り外しができる)
ホーレータイプリテーナー(Hawley type retainer)
構造は前歯部用いる唇側線(ワイヤー)と大臼歯のクラスプ、そして樹脂(レジン)で制作されている。
ラップアラウンドリテーナー(wrap-around retainer)
ホーレータイプリテーナーから派生したラップアラウンドリテーナー(wrap-around retainer、ベッグタイプと呼ばれる事もあります)です。このリテーナーがもっともよく使用されます。それは噛む所にはワイヤーがありません。セトリングが起こりやすい装置です。適応症例が多いです。副院長は一週間に一度水曜日の午後に恩師とペーパーワークと称してリンガルブラケットに関する本を執筆事をしています(2020年2月に出版されました)。その時の話にラップラウンドリテーナーの事を記載しました。ラッパーというと今の若者が歌うラップを連想します。しかし、英語のwrapこれはサランラップに近い、要するに歯列を周囲から包み込むという意味だったんです。ラップね!と笑ったそうです。
装着したところです。上がラップアラウンドで下がホーレータイプです。
クリアリテーナー
クリアリテーナーは最近よく使用されます。透明で見えないのでリンガルブラケットを使用した後に装着するリテーナーとしては最適です。機械があればその場で制作できます。アイ矯正歯科クリニックでもブラケットを除去した日にこのクリアリテーナーを制作します。後戻りさせないという事と遠方の患者様の来院回数を減らす事ができます。
アイ矯正歯科クリニックではクリアリテーナーとラップアラウンドあるいはホーレイタイプリテーナーの2つを必ず作ってお渡しています。絶対に後戻りさせないようにしています。
トウースポジショナー
軟質の高分子材料で作るマウスピース様の保定装置です。わずかな歯の移動は可能です。ただし、装着感は悪いです。
代表的な可撤式保定装置を示しました。取り外しができるという事は患者様の使用時間によってその効果は左右されます。
ワイヤー固定式保定装置
ワイヤーを歯に接着させる事で移動した歯の位置を維持するタイプの保定装置です。これは特に捻転などの戻りやすい不正咬合に適応させます。また可撤式(取り外しのできる保定装置)だと患者様の使用時間が問題になります。お仕事で保定装置が使用できない。学校では使用できないなどの患者様の社会環境によっても保定装置は選択されます。固定式だと患者様は取り外しできません。お口の中にワイヤーが接着したままになるので定期的にクリーニングする必要があります。ワイヤーが外れた事に気づかない事もあるので注意が必要です。