歯列矯正のメリット・デメリットから説明を始めます。
メリット
横顔、口もとの改善、結果として小顔になる
お顔立ち、横顔を気にして来院される患者様がもっとも多いです。“口もとを下げたい”。と言った希望です。日本人は欧米人と比較して鼻が高くありません。下顎骨が劣成長なのも特徴です。そこで口もとを下げる事によって相対的に鼻が高く見えます。これには他の美容系の施術などと比較して、歯列矯正の優れた所です。口もとが変化しただけで全体的なイメージが大きく変わります。
歯列矯正治療前後の横顔のお写真です。変化しているのは口もとだけですが、大きく変わっています。治療前には下唇の下にいわゆる梅干し状の筋肉の緊張がありました。これは出っ歯、上下顎前突、開咬などの前歯が前方に傾斜している不正咬合の特徴です。下唇に力を入れて押し上げないと口が閉じられないためです。上口唇が下がってきて閉じるわけではありません。上下の口唇が出会うのは上顎前歯切縁の上方約1㎜の所です。そこで上顎前歯の位置が口もとに与える影響が大きくなります。歯を内側に移動させれば改善する事になります。治療後の変化は上顎第一小臼歯を抜歯して上顎前歯を内側に移動したために起きた変化です。もちろん裏側からのリンガルブラケットで治療しました。アンカースクリュウなどは使用していません。長年の悩みが解消しました。
口もとを下げる効果は歯列矯正、特にリンガルブラケットに勝る治療法はありません。
歯の健康のために歯列矯正したい
歯ブラシがあたらない。ブラッシングできない
ブラッシングしているのにみがけない。歯ブラシの毛先が届かない部分がある。このままだと虫歯になってしまいます。
緑色のサークルで囲っているように歯が重なっている。この状態は虫歯や歯肉炎、歯周病の原因になります。さらに飛び出している犬歯(八重歯)は出ているために歯茎の位置が加齢と伴に低下していきます。いずれは歯根が露出してきてしまいます。今なら矯正治療する事で改善できます。間に合います。
上下第一小臼歯を抜歯してリンガルブラケットで治療しました。乱杭歯の治療にはリンガルブラケットは適しています。すでに外に飛び出している犬歯(八重歯)の外側に一般的な表側のブラケットを装着するとさらに飛び出した感じになります。唇の内側の粘膜も傷つけてしまいます。
出っ歯で口が閉じられない。口が乾燥してしまう。
歯茎は粘膜です。粘膜は乾燥に弱い組織です。従って歯周病になりやすいです。特に寝ている間は唇が閉じていません。
この患者様は私が治療した中でもっとも厳しい出っ歯(上顎前突)でした。上段の写真は真横から撮影したものです。上下前歯の差がこれだけある患者様はめずらしいです。下顎は左側5番(第二小臼歯)が内側に倒れこんでいます。右側については同じような症状で抜歯されてしまいました。下顎は1本少ないです。
上段に治療前、後を並べてみました。大きく改善しました。リンガルブラケットは内側にブラケットがつきます。そのために歯を内側に移動させる事が得意です。下顎は内側に倒れこんでいた左側第二小臼歯を本来の位置に排列しました。左側は第二小臼歯はないままの状態です。治療は成功しました。アンカースクリュウなどは使用していません。
コンプレックスの解消
歯並びが悪い事を大変気にされている方は、会話をする時に口もとを手で隠すといった行動をします。また気づかれないような姿勢を常にしている方もいます。例えば骨格性下顎前突の患者様では下顎が出ている事を隠すために少し顎を引き気味にしている方もいます。こういったコンプレックスに思う事が解決できれば違う人生になれると思っている方も多くいます。一生、口もとを気にしますか?疲れてしまいます。矯正すれば解放されるのなら行いたいのではないでしょうか。これが精神的な健康につながると考えています。
前歯で噛めるようになる。咀嚼できるようになる。健康になる。
歯は消化器官の入り口です。乱杭歯、八重歯、上顎前突(出っ歯)、そして開咬などは歯が噛んでいないという症状でもあります。噛めないでほとんそ飲み込んでいるのではないか?と思われる歯並びの患者様もいます。
前歯部開咬の治療前後です。開咬とは噛んだ状態で連続した数歯にわたって噛んでいない状態を言います。この患者様の場合はほとんど食物は丸のみしていたような状態でした。噛んでいるのは最後方臼歯が左右で一本づつでじた。
デメリット
歯根吸収
強い力を加えると歯根吸収が起きる事が指摘されています。持続的で弱い力を加えるように注意して治療します。アイ矯正では使用していませんがアンカースクリュウを使用した治療には注意が必要です。強い矯正力になりやすいです。私は重篤な歯根吸収が起こした経験はありません。丁寧に治療していれば心配する必要はありません。
歯肉退縮
歯が顎骨から出ていくような方向に力を加えない。成人の患者様で過度に歯列を拡大してしまうと起きます。成長発育はないので顎骨が大きくなる事はありません。無理に非抜歯で治療すると骨を超えた拡大になります。これは危険です。特にマウスピース系の装置は非抜歯になる事が多いです。結果、歯だけが外に出ていく事になります。これには注意が必要です。成人の患者様は小臼歯などの歯を抜歯してその場所を使って前歯などを排列します。逆に小さくなります。内側に移動します。
心配するデメリットは上記2点ぐらいです。患者様それぞれに適正な診断をおこないそれに基づいた治療をおこなえば歯列矯正はとても安全な治療です。
矯正治療が必要かどうかの判断の仕方
不正咬合の種類
出っ歯(上顎前突)、反対咬合(受け口、下顎前突)、乱杭歯・叢生(デコボコして排列していない状態、八重歯を含む)、開咬(連続した数歯にわたって、噛んでいない歯がある)、過蓋咬合(かみ合わせが深い、噛んだ時に下の歯が見えない)などです。このどれかにあてはまる方は治療の必要があります。また不正咬合が重複している場合も多くあります。たとえば出っ歯で過蓋咬合などです。
治療の必要があるか?矯正歯科医はどうやって判断しているのか?
矯正歯科医は治療に先立って、必ず精密検査をします。見た目だけに頼るという事はしません。もちろん30年も矯正治療だけをやっているので見た感じとそれほど大きくかけ離れた結果になる事はありません。それでも精密検査はおこないます。間違いがあったら大変です。
初日は治療に関する説明と検査になります。上下顎骨の前後的な位置関係、下顎の形態、前歯の傾斜角度、歯の大きさ、親知らずの有無などです。それをまとめて診断時に結果を説明します。そして治療方針、治療計画を組み立てます。基本的には日本人の正常咬合者のデータと比較して判断します。院長はこういった正常咬合者の基準データを算出する研究をしていました。矯正治療のゴールは個性正常咬合です。これは患者様それぞれの適正な状態になります。日本人の標準値にする事ではありません。
患者様はその結果を理解し治療を受け入れるかというのは患者様のご判断です。最終決定は患者様が決めめる事です。
歯列矯正の種類 (表側・裏側・マウスピース)それぞれのメリット、デメリット
表側のブラケット:一般的な矯正装置
歯の表側の表面にブラケットを装着します。これはもっとも一般的な矯正治療になります。現在は前歯部に白い樹脂やセラミックなどでできたブラケットを装着し、なるべく目立たないように装置が出てきました。
裏側のリンガルブラケット:日本生まれの成人矯正に適した装置
私の先生である藤田欣也先生が1970年代に開発し治療法を確立しました。私はその弟子になります。歯の裏側にそれように作られた特殊なブラケットを用いて治療をおこないます。約40年の歴史がありますが、治療にはかなり高いスキルが必要なために、一般的な矯正歯科専門医には扱えません。ブラケットとワイヤーで治療するのは表側の装置と同じです。効果は前歯を内側に移動する事が得意です。乱杭歯、出っ歯に適しています。周囲の人に気づかれずに治療をおこなう事ができます。アイ矯正の患者様の90%以上はこの治療を選択しています。コロナ禍でマスクをしているので裏側でなくてもと言われる患者様も増えてきました。しかし、コロナ禍はワクチン接種で急速に改善すると私は思っています。
マウスピース治療:ごく簡単な不正咬合の改善に適しています。
患者様の歯型をとって会社に送り、送られてきたマウスピースを装着するだけという手軽さです。歯科医のスキルは必要ありません。誰でもできます。従って一般歯科医がこの治療を取り入れるのはこのためです。送られてきたマウスピースの調整はできません。この治療法が確立されれば歯科医にとっては夢のようです。特別な研修や長い年月を要する矯正治療の勉強から解放されます。そうなればアイ矯正でも採用します。簡単です。
最大の欠点は制作した人が実際に患者様に会った事がないことです。デジタル化したデータや写真だけでは患者様の事がすべて理解できません。小臼歯などを抜歯する必要のあるケースには向きません。装着時に話し方が空気が抜けたようになります。これは装置が噛む面までおおっています。そのために上下の前歯の間に隙間ができます。
今の所、アイ矯正ではこの治療はおこなっていません。まだ不完全だと思います。公益社団法人日本矯正歯科学会のマウスピース矯正に関する結果のリンクを貼っておきます。これを読んで頂けるとよいと思います(https://www.jos.gr.jp/4348)。
部分矯正
ある部分だけを治療したいのだから部分矯正だと患者様は思っています。しかし、歯科医はある部分にしか装置をつけないという意味で使用しています。そのため低料金です。本格的な治療ではありません。マウスピース治療と同程度の効果しか望めません。前歯のわずかな叢生(デコボコ)などを前歯だけに装置をつけて排列するのには適していますが、前歯が前方傾斜したために口もとが出てしまったという事はよくあるようです。不完全な治療になります。矯正専門歯科医はやらない治療です。アイ矯正でもおこなっていません。
上記2つの治療法は特別な訓練やスキルが必要ありません。従って一般歯科医での矯正治療はこの2つの方法が多いです。
歯列矯正の費用・期間
安い物は安いなりの理由があり、高い物は高いなりの理由があります。
表側からの治療を1とすると裏側からの見えない矯正治療(リンガルブラケット)の治療はその1.5倍とお考えになればよいでしょう。治療期間は同じです。小臼歯などを抜歯しなければ1年~2年、抜歯する場合は2年~3年というのが一つの目安になります。歯を早く移動させる方法は現在の歯科医学ではありませんので注意してください。
裏側矯正歯科医院の選び方
長引く歯科不況と歯科医院の過飽和状態が続く中でついに矯正歯科の倒産、いわゆる夜逃げのようなニュース報道がありました。矯正治療を歯科医が修得するには最低でも10年は大学の医局あるいは専門歯科医院での研鑽が必要です。さらにそこから資金を調達し開業します。軌道に乗るまでにはさらに数年はかかる事でしょう。しかし、もしこお青写真通りに行かなければ歯科医院も倒産します。患者様はすでに治療費を支払われています。突然の閉院。どんな解決ができるのでしょうか?私も注目です。
経営の安定した歯科医院を選ぶ
歯科医院の倒産
都内の一等地での開業を憧れる歯科医は多くいます。確かに恰好いいですよね。患者様もきっと腕のよい歯科医だろう?と言った期待をもたれることでしょう。アイ矯正もリンガルブラケット、裏側矯正を専門にしているのなら都内の一等地に出なければと思った事もありました。しかし、来ていただける患者様を一人一人大切に診療するとなるとそれほど多くの患者様を扱えません。それなら生まれ育ったこの地での開業で十分だという結論に達しました。都会での開業は怖ろしい話も聞こえてきます。家賃、歯科医・衛生士の人件費、広告宣伝費など都会で開業すれば競争力がなければ生き残れません。都会は過当競争です。テナント代が月に100万円といった歯科医院も実際にあります。歯科医院を運営するために高額なランニングコストが必要になります。最終的にその負担はすべて患者様の治療費に反映されます。自転車操業になります。都会だからと言って本当に腕のよい歯科医でしょうか?そんな証拠はどこにもありません。治療をしながら、常に経営を考える必要があります。“最低、何人の新規患者様が来ないと潰れる” 倒産するのはこの危ういバランスシートの上に成り立っている歯科医院だと私たちは考えます。健全な経営があってこそ、最良な矯正治療を提供できます。
矯正歯科医院の閉院
矯正歯科治療は年単位の治療です。後を継ぐ後継者がいればよいのですが、いつかは閉院しなければなりません。計画的に患者様を減らしていかないとご迷惑をおかけます。患者様が減ってもテナント代やランニングコストは同じです。必ず支出が入って来るお金よりも多くなる時が来ます。その時のための準備期間が必要になります。開業する事も大変ですが閉院するのはもって大変かもしれません。突然歯科医院がなくなった。ドアに閉院のお知らせが貼ってあった。と言ったトラブルは今後増える事が予想されます。幸いにもアイ矯正にはこのテナント代がありません。倒産する事は絶対にないと言える歯科医院です。ご安心ください。
セカンドオピニオン ハーフリンガル症例 裏側矯正歯科医院の選び方
このブログを参照してください。歯科医院選びのお役に立つと思います。