ガミースマイル(gummy smile)とは
笑った時に上顎の歯茎が過剰に見える状態を言います。ガミースマイルで悩んでいる方は多くいます。これが矯正治療で治るか?を考えてみます。
ガミースマイル
ガミースマイルの原因
1.上口唇が上方に過剰にあがってしまう。
上口唇が過剰に上にあがらなければガミースマイルにはなりません。笑った時に唇が上方にあがって歯茎が過剰に露出した状態を言います。唇がよく持ち上がるという動作とさらに唇が短い、short lipe(ショートリップ)と言った状態でもガミースマイルは起きます。
2.骨格性の問題
上顎骨の垂直方向の長さが長い。歯茎の長さが長い。鼻の下の部分の骨が長い。これも原因になります。骨格性上顎前突で上下顎骨の位置に差が大きい場合もなります。
3.歯冠が短い、小さい
歯の歯冠部の垂直的な高さが少ない。歯が小さいのですぐに歯茎が見えてしまいます。永久歯でも乳歯のような歯の大きさだとなりやすいです。
4.上顎前歯が内側に傾斜していてかみ合わせが深い(過蓋咬合)
上顎前歯が内側に傾斜しすぎている。そのために上顎前歯が下方に垂れ下がっているような場合です。必ずではあいませんが過蓋咬合の患者様にガミースマイルの方が見られます。
ガミースマイルの治療
アンカースクリュウ、ヘッドギア(J-フックタイプ)で上顎前歯部の圧下
上顎前歯を上方に移動させる。これを矯正治療では圧下と言います。圧下とは歯の萌出方向と逆の方向に歯を移動させる事です。圧下は歯の移動の中でもっとも移動が難しいとされています。上顎前歯を圧下させるには2つの方法があります。ブラケットに装着されたワイヤーだけでは難しいです。
アンカースクリュウ
上顎前歯の上方の骨の中に金属製のネジを埋入させて、そこから牽引します。ある程度は効果が期待できますが、審美的ではありません。見える部分にネジがある事、さらにそこからゴムで牽引しています。ゴムは時間がたつと変色します。リンガルブラケット(裏側、舌側矯正)では適応できません。表側に装置が必要です。アンカースクリュウを使用すると力が強くなる傾向があります。力が強くなると歯根吸収のリスクは増します。
Jフック
これはアンカースクリュウ以前からある方法です。これはリンガルブラケットでもおこなう事は可能です。適応できます。頭の部分にヘッドギアをかぶって上方に牽引します。これは取り外しができます。効果は使用している時間次第です。
まとめ
上記2つの方法を使用しても5㎜も上方にあがる事はありません。2~3㎜圧下できればという結果です。これでガミースマイルが改善するか?と言えば、私は難しいと思います。圧下に加えて上顎前歯の前方傾斜させる事でさらに上方にあがった事になります。これが矯正治療でできる最大です。下顎前歯は私の経験ですと4㎜ぐらいは圧下できますが、上顎骨と下顎骨の形態や構造の違いで上顎前歯はそこまで圧下できません。ほんの数ミリの変化でガミースマイルが治るか?私はかなり疑問だと思います。
原因1から3までは解決できません。2は手術で可能か?外科手術をしてできるか?3は治療できるような感じを受けるかもしれませんが、歯を長くする事はできません。
ガミースマイルが矯正治療で治るか?と聞かれれば私は正直に難しいです。と答えます。どこまで患者様が期待しているか?原因は何かを把握させて頂いて返事をさせて頂きます。女優さんの中にもガミースマイルや特徴的な口もとをされている方がいます。私は個性だと思うのも重要ではないかと思います。
例に挙げた患者様は実はガミースマイルではありません。
ガミースマイルになる要件の中で1点だけクリアしていました。それは上口唇です。この患者様は上口唇が笑った時にそれほどあがりません。私はこれがガミースマイルの治療が矯正治療では難しいと言われる結論だと思います。上口唇があがらなければガミースマイルにはなりません。