アデノイド顔貌とは?矯正専門医が原因と治療法を解説
アデノイドとは?
アデノイドは咽頭扁桃の事です。リンパ組織です。鼻の奥の方にあり、呼吸などで細菌やウイルスの肺への侵入を防ぐ役目をしています。その他にも風邪をひいた時に内科の先生が舌圧子でお口の中の扁桃(口蓋扁桃)の腫れなどを確認したりします。アデノイドは矯正治療の検査セファログラム(頭部エックス線規格写真)で確認できます。矯正歯科医はレントゲン上で必ず気道を確認します。
アデノイドの成長発育
ハリス(Harris JA)とスキャモン(Scammon RE)の臓器発育曲線です。アデノイドはこの中のリンパ型の成長に属しています。リンパ型の成長は12歳前後で成人の約2倍に成長し、その後に小さくなります。これが特徴になります。従って年齢によってはアデノイドが大きくなっていても異常ではありません。
患者様のセファログラム(側面頭部エックス線写真)からもアデノイドの肥厚は見られますが鼻気道は確保されています。問題はありません。
アデノイド顔貌とは、特徴と口ゴボとの違い
(出典:CLIINICAL SYMPOSIA Vol.46 No.2 1994)
慢性的なアデノイドの肥厚による長期間の鼻閉塞が原因で口呼吸となり、常に口を開けて呼吸するために、顔が長くなります。この顔が長いというのがアデノイド顔貌の特徴です。いわゆる口ゴボとは違います。口ゴボは下顎骨後退と劣成長による上顎前突の事です。アデノイド顔貌は顔が長くなったために骨格性開咬となります。似ていますが違います。また原因がはっきりしています。しかし、医療の発展によって現在はほとんど見られなくなりました。花粉症程度ではここまでの症状にはなりません。
アデノイド顔貌の治療方法
耳鼻咽喉科への受診
アデノイドの慢性的な肥厚に関しては耳鼻咽喉科での治療が必要です。まずは矯正専門歯科医院でレントゲン検査を受ければアデノイドが肥厚している事ががわかります。明らかになれば耳鼻咽喉科で鼻呼吸が可能なように治療して頂く必要があります。
矯正歯科での治療
耳鼻科領域での治療で鼻呼吸が可能になってから、口呼吸での癖を治します。口呼吸では舌の位置が下顎の中に留まる低位舌という症状になります。正常な舌は口蓋(上顎に着いています)。これだと口呼吸はできません。またいつも口を開けているので口唇の筋肉は弛緩した状態です。ゆるんだ口唇のために上下前歯は前方に傾斜してしまいます。上下顎前突あるいは開咬という不正咬合を発症します。場合によっては上下第一小臼歯を抜歯して前方傾斜した前歯を後方に移動させる事によって治療します。開咬治療にはリンガルブラケット舌側矯正(裏側矯正)が有効です。
リンガルブラケット舌側矯正(裏側矯正)が適している理由
・装置が内側に着いているために舌が前歯を前方に押し出すような動作ができなくなります。
・口唇の筋肉が弛緩しているために表側に装置が着くと、さらに口唇の外側からの圧力がなくなります。
・リンガルブラケットは前歯を内側に移動させるのに有利な装置です。
悩んだら専門家に相談を
Q: アデノイド顔貌は自力で治せますか?
A:治せません。まずは鼻閉塞に気づいた時に耳鼻科で相談してください。症状が慢性化する前に矯正歯科での治療が好ましいです。ただし、お顔が長く変化するほどの鼻閉塞は稀な事です。
耳鼻科と矯正歯科を同時期に行くのもよい方法です。矯正治療をすべきか・どのような治療が必要かで悩んだら専門家にまず相談してください。開咬は不正咬合の中で難しい部類になります。専門的な知識の高い矯正歯科を選んでください。成長発育が関わってきます。なるべく早期の発見と治療が望ましいですが、すでにアデノイド顔貌になってしまった場合は外科矯正の可能性もあります。