- リンガルブラケットの真実と歴史:世界初のリンガルブラケット、フジタメソッド
- 歯に直接接着できる材料の発明
- 1970年代まずは表側に着けるブラケットを裏側に接着して治療をおこなった。
- 1975年に最初のリンガルブラケットの制作-First generation
- 1976年 日本での特許取得 Appliances for Lingual Orthodontic Treatment
- 1980年、1982年 アメリカで特許を取得
- 1978年 第2世代のリンガルブラケットを発表-Second generation
- 1978年世界で最初の論文がジャーナルに掲載されました。Development of Lingual Bracket Technique (JDAM vol. 19 No.46. 1978)
- 1979年 アメリカ矯正歯科学会機関紙:American Journal of Orthodonticsに掲載さました。アメリカ矯正歯科学会誌は矯正歯科の世界で世界最高峰のジャーナルです。
- 1982年 再びAJOに掲載されました。“Multilingual-bracket and mushroom arch wire techinique” A clinical eport
- 1982年 第3世代リンガルブラケットを発表-Third generation
- 1985年 第4世代リンガルブラケットを発表-Forth generation
- 1986年 第5世代リンガルブラケットを発表-Fifth generation
- 1986年 私どもがフジタメソッドの講習会を受講しました。
- 1990年代 第6世代リンガルブラケットを発表-Sixth generation
- 1999年 アメリカ矯正歯科学会誌 American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthodontics (1999;115: 654-9) に症例報告を掲載しました。
- 2002年Journal of Orthodontics, Vol. 29. 2002. 267-275 イギリス矯正歯科学会誌になります。
- 2009年 アメリカ矯正歯科学会誌 American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthodontics (2009; 136: 596-606) に症例報告を掲載しました。
- 2015年にアーチワイヤーを同時に2本装着する方法、ダブルワイヤーテクニックをResearch論文として発表しました。
- 2017年に噛み合わせの深い症例をリンガルブラケットで治療しました。この症例を症例報告としてJournal of the World Federation of Orthodonticsに掲載されました。
- 2020年 “Welcome to Fujita Method. The Philosophy and Art of the Lingual Bracket Treatment”の出版
リンガルブラケットの真実と歴史:世界初のリンガルブラケット、フジタメソッド
これは藤田欣也先生の歴史と言っても過言ではありません。今年(2020年)出版した私の本の中から提供して頂いた貴重な資料をもとにリンガルブラケット“見えない矯正治療”のフジタメソッドの歴史について記載していきます。リンガルブラケットには歴史に裏付けられた治療法があります。矯正治療が一般化していない日本において不正咬合のまま成人になってしまい、社会環境からブラケットを表側には装着できない。その解決策として誕生しました。
リンガルブラケットはその治療の特殊性から歪曲して伝わっている事があります。理解して頂くためにリンガルブラケットの真実の姿についても記載して行きます。
歯に直接接着できる材料の発明
1971年東京医科歯科大学三浦不二夫教授が“Direct Bonding System” テクニックをアメリカ矯正歯科学会で発表。
歯の表面にプラステックブラケットの接着の仕方を実践した。これが現在のSuper Bondになります。それまでは1本づつの歯に金属製の輪(バンド)を装着し、それにブラケットを電気ろう着していました。すべての歯にです。
・審美的ではない。
・う蝕のリスクが高い。バンドの辺縁の部分からう蝕になりやすいです。さらに当時のバンドを接着していたセメントの質も悪くてそこからもう蝕になりやすかったです。
・装着が大変。すべての歯に装着するために歯と歯の間を離開させる必要がありました。これはかなり痛みです。また術者も大変でした。
Super Bondの出現は大変画期的な発明でした。これがなければ歯の裏側(舌側)にブラケットを接着させる事は考えられませんでした。
リンガルブラケットを発明し実際に臨床をおこなった藤田欣也先生から本を執筆するために提供して頂いた貴重な資料を供覧しながらリンガルブラケットの歴史について説明していきます。
1970年代まずは表側に着けるブラケットを裏側に接着して治療をおこなった。
最初からリンガルブラケットが存在していたのではありません。まず最初は手に入る表側のブラケットを歯の裏側に接着しておこないました(藤田欣也先生提供)。
1975年に最初のリンガルブラケットの制作-First generation
世界で最初に制作されたリンガルブラケットの貴重な写真です(藤田欣也先生提供)
1976年 日本での特許取得 Appliances for Lingual Orthodontic Treatment
1980年、1982年 アメリカで特許を取得
リンガルブラケット装置とマッシュルーム型のアーチワイヤー
藤田欣也先生はリンガルブラケットの装置、治療に関する特許を日本とアメリカで取得
1978年 第2世代のリンガルブラケットを発表-Second generation
lock pinを用いてアーチワイヤーをブラケットを固定する事にした。
1978年世界で最初の論文がジャーナルに掲載されました。Development of Lingual Bracket Technique (JDAM vol. 19 No.46. 1978)
Journal of the Japan Society for Dental Apparatus and Materialsに掲載された論文が世界で最初のリンガルブラケットに関する論文になります。
1979年 アメリカ矯正歯科学会機関紙:American Journal of Orthodonticsに掲載さました。アメリカ矯正歯科学会誌は矯正歯科の世界で世界最高峰のジャーナルです。
“New orthodontic treatment with lingual bracket mushroom arch wire appliance”
矯正歯科医なら誰もが憧れるAJOです。このジャーナルに新しい方法を考えて掲載されれば特許を取ったのと同等の価値があります。初めての治療法だという事を認知されました。この論文の中には3つの症例報告も含まれていました。これでリンガルブラケットを用いた矯正治療、フジタメソッドとして紹介されました。
“Mushroom Archwire” この形状がマッシュルーム型なのでそう呼ばれています。このジャーナルのFigureから抜粋しました。
1982年 再びAJOに掲載されました。“Multilingual-bracket and mushroom arch wire techinique” A clinical eport
1982年のAJOです。この頃から藤田欣也先生はこの治療法の事をFujita Method(フジタメソッド)と呼ぶようになりました。論文にもそう記載されていました。この論文には5つの症例報告も含まれていました。20ページに及ぶ大論文です。
1982年 第3世代リンガルブラケットを発表-Third generation
このブラケットはアーチワイヤーを固定するのにsnapsという特殊な装置を組み込む事ができます。さらに従来からある結紮線で固定する事もできます。
1985年 第4世代リンガルブラケットを発表-Forth generation
self-ligation system
このブラケットはアーチワイヤーを固定するための回転式のシャッターがついています。これは今もこういったブラケットはあります。おそらく世界初ではないか?と思います。この発明はすぐいです。
1986年 第5世代リンガルブラケットを発表-Fifth generation
このブラケットから私たちもリンガルブラケットの治療を開始しました。というのも院長は1985年に歯科医になっています。
このブラケットに初めて完全に上下にアーチワイヤーを入れる溝(スロット)を持つマルチスロットブラケットになりました。とても扱いやすいブラケットです。今のブラケットとの原型になります。
1986年 私どもがフジタメソッドの講習会を受講しました。
そして早速、鶴田正彦先生のご指導で臨床研修を始める事ができました。私どもが最初に使用したブラケットはこの第5世代でした。とても完成したブラケットでした。
1990年代 第6世代リンガルブラケットを発表-Sixth generation
現在使用中のリンガルブラケットです。
現在の第6世代リンガルブラケットです。第5世代との違いはウイングの長さが長くなりました。その結果、アーチワイヤーを固定する結紮のやり方が増えました。扱いしやすくなりました。
1999年 アメリカ矯正歯科学会誌 American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthodontics (1999;115: 654-9) に症例報告を掲載しました。
これは私たちのAJO-DOのデビューCase Reportになります。下顎前突の外科症例をスクリュウを用いて術後に固定したという症例です。おそらく世界で最初のアンカースクリュウを使用した症例になります。当時はアンカースクリュウと言う言葉ありません。スクリュウ(screw)とだけ記載されています。このスクリュウですが整形外科領域ですでに骨の固定に使用されていたものです。これで私どもの学術デビューとなります。
2002年Journal of Orthodontics, Vol. 29. 2002. 267-275 イギリス矯正歯科学会誌になります。
この頃からInvisible treatment(見えない治療)という言葉でリンガルブラケットの論文を書くようになりました。この症例は厳しい乱杭歯と反対咬合がありました。表紙にもリンガルブラケットの写真を掲載してくれました。この頃は私はシカゴ唯一の歯学部であるイリノイ州立大学シカゴ校(UIC)に留学していました。この論文を機会に矯正科で口演する事になりました。
2009年 アメリカ矯正歯科学会誌 American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthodontics (2009; 136: 596-606) に症例報告を掲載しました。
この症例は5歳の時の交通事故から始まります。下顎骨、下顎頭頚部を骨折しました。東京女子医大に入院し治療を受けました。その後、下顎骨骨体部の骨折線上にある永久歯3本が形成されませんでした。そこで歯を排列するために抜歯した反対側の小臼歯を抜歯して移植しました。その後リンガルブラケットを用いて矯正治療をおこないました。アメリカ矯正歯科学会誌に再び症例報告を掲載する事ができました。
2015年にアーチワイヤーを同時に2本装着する方法、ダブルワイヤーテクニックをResearch論文として発表しました。
2017年に噛み合わせの深い症例をリンガルブラケットで治療しました。この症例を症例報告としてJournal of the World Federation of Orthodonticsに掲載されました。
現在、アイ矯正が使用しているのはこの第6世代のフジタメソッドのリンガルブラケットになります。どうして完成度が高いのかが理解して頂けたと思います。長い年月を経て今の形になりました。私は藤田欣也先生は天才だと思います。もちろん努力家でもあります。
2020年 “Welcome to Fujita Method. The Philosophy and Art of the Lingual Bracket Treatment”の出版
“Welcome to Fujita Method. The Philosophy and Art of the Lingual Bracket Treatment”を執筆するにあたり藤田欣也先生から多くの資料を提供して頂きました。本は私の師匠である鶴田正彦先生と約5年の歳月を費やしてこの春に出版されました。ありがとうございました。
長い歴史がリンガルブラケット(フジタメソッド)にある事に驚かれると思います。リンガルブラケットは昨日今日できたものではありません。ここに私どもの研究も含めて学術的に列挙させて頂きました。ご理解して頂けると幸いです。