部分矯正とは
最近、部分矯正についての問い合わせが増加しています。また部分矯正で思ったような治療結果が得られなかったというご相談も頂いています。では部分矯正とは何でしょうか?
部分矯正治療の定義
部分矯正は歯列の一部にブラケットを接着して治療する事を言います。例えば前歯部だけブラケットを装着するというものです。しかし、患者様が思っている事は前歯だけ治療したい。ある部分だけ治療したい。そこで部分矯正だと思われています。口もとを後ろに下げたいというのはできません。むしろ必ず前方に出てしまいます。これがトラブルの原因になっているようです。
部分矯正の利点
・費用を抑えられる事ができる
一部分だけにブラケットを装着するので全体的な矯正治療に比べて費用を抑える事ができます。半額程度というのが目安になります。
・治療期間が短い
その部分にだけブラケットを接着しワイヤーを通します。従って治療期間が短くてすみます。3か月もすれば簡単に並んでしまいます。効果は限局的です。これも費用を抑える事には寄与しています。
・術者である歯科医に特別な能力が必要ない
部分的矯正の場合は矯正治療の専門的な知識は要りません。例えば横顔のレントゲン写真を撮影し分析する必要もありません。精密検査は要りません。矯正歯科医としてのトレーニングも要りません。一般歯科程度の知識でできます。しかし、これが大きな欠点にもなります。
部分矯正の適応症例
・限局したデコボコ(叢生:そうせい)がわずかに存在する程度で他には悪くない。
デコボコ(叢生)が改善し歯が排列すると口もとは前に出てしまいます。日本人は欧米の人と違い鼻が低いのが特徴です。従って横顔が悪くなる事に注意が必要です。
・口もとの変化を求めない症例、横顔がきれいな患者様に適応です。
口もとを下げたい、あるいは横顔をキレイにしたいという事はできません。逆に口もとが出る事はあります。これには特に注意してください。
・非抜歯症例
小臼歯などの歯を抜歯する必要があるような症例には部分矯正は適応できません。従って効果は限局的です。
部分矯正の欠点
口もとの突出
叢生を改善させるたもに前歯は前方傾斜します。不足した場所は前歯を前方に傾斜させて解決します。従って口もとは前方に突出します。
上下が噛み合わない
上下が噛み合わなくなる。ある部分だけしか動かしません。噛み合わせを治療する事はできません。
後戻りが起こりやすい
部分矯正治療でも保定装置(リテーナー)必要です。他の歯が動いていない事、かみ合わせる事が難しい事、前歯が前方傾斜する事などから後戻りは起きやすいです。
部分矯正の禁忌症例
・上顎前突(出っ歯)
前歯にブラケットを接着して前歯を排列しても前歯を後方に移動する事はできません。移動させるには臼歯部にブラケットが必要です。
・下顎前突(受け口、反対咬合)
下顎前歯を内側に移動したり、上顎前歯を前方に移動したりできません。前歯を移動させるには臼歯部に装置が必要になります。これは全体的な矯正治療でないとできません。
・空隙歯列(すきっ歯)
隙間を閉じる事はできません。前歯の隙間を閉じる事ができてもその隙間は別の場所に移動するだけです。閉鎖するためには臼歯部に装置が必要になります。
・八重歯
部分矯正治療は小臼歯などの歯を抜かない治療です。八重歯は歯の排列スペースのない症例です。これを部分矯正治療で治そうとすると前歯を前方に傾斜させる必要があります。口もとが飛び出してしまいます。
・開咬(噛んでいない)
開咬は上下でゴムを使用する必要があります。臼歯部もコントロールしないと前歯で噛むようにはなりません。
部分矯正治療の歯科医院選びのポイント
・全体的な矯正治療ができる能力のある矯正歯科専門歯科医院を選択する
部分矯正治療だけを売りにしている歯科医院は危険です。それだけしかできない能力だということです。もし部分矯正で治療できない場合に全体的な矯正治療ができないようですと転院しなければならなくなります。転院するとさらに費用が加算されます。それなら最小から全体的な矯正治療をおこなえばよかったという事になります。うまい話には乗らないでください。
・目的をはっきり説明し治るか?どうかを確認しよう
部分矯正治療に大きな期待をもたないでください。その部分だけ歯が排列するだけです。自分は何が治療したいか?どうなりたいか?をはっきり説明し、それが可能か?確認してください。
・あまりにも低料金は避けよう
低料金の歯科医院はもともとその歯科医に治療に対するスキルが不足している事を自己判断しているようなものです。できないから安くする。あるいは治療時間が短く15分に1人の患者様を稼働させている可能性もあります。これだと丁寧な治療はできません。
・治療期間が極端に短く言う歯科医院はやめよう
部分矯正治療でも保定は必要です。小臼歯などの歯を抜いて矯正治療するような症例は部分矯正の適応症例ではありません。非抜歯症例は後戻りに特に注意が必要です。リテーナーを使用しなければ元の状態に後戻りしてしまいます。