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アンカースクリュウとは?メリットとデメリット、歯根吸収との関係

アンカースクリュウ

アンカースクリュウとは

マウスピ―ス矯正と同じように流行している装置としてアンカースクリュウがあります。色々な形の製品が出回っています。仕組みは簡単です。骨の中に歯を引っ張る(牽引)ためのネジを埋入してそのネジから歯を牽引するものです。イメージとしてはキャンプに行った時にテントを張るためのペグ?釘のようなものです。今ではアンカースクリュウを必ず使用するといった歯科医もいるようです。しかし、本当に必要でしょうか?ではアンカースクリュウが世の中に出現する前の治療は治っていなかった?そんな事はありません。

アンカースクリュウに対する間違った期待、骨格には何の作用もない。

アンカースクリュウに対する過大な期待を寄せている患者様が多くいます。骨格に作用する事は決してありません。上顎骨、下顎骨に対する作用はまったくありません。アンカースクリュウは只の牽引するための取ってを骨の中に埋入させただけです。最近は過剰な評価がされているようです。

アンカースクリュウを世界で最初に使用したのは私たちです。

アイ矯正の副院長は1999年にAJO-DO(American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics, アメリカ矯正歯科学会誌)にリンガルブラケットで治療した症例報告を掲載しました。この論文がアンカースクリュウでは世界で最初の報告ではないか?と言われています。当時はアンカースクリュウという名前ではなくscrewとして記載されています。これは整形外科で、すでに認可されていた骨の固定に使用されているscrewを歯科で使用しました。

Case Report

Multilingual bracket treatment combined with orthognathic surgery in a skeletal class III patient with facial asymmetry. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1999; 115(6): 654-659.

この論文の共著者には現在の韓国舌側矯正歯科学会会長のYB. Choi先生も参加しています。当時は留学生でした。外科矯正治療の患者様の手術直後に骨の固定およびゴム牽引をこのscrewからしました。

論文の中に実際に使われていたスクリュウです。まさにネジといった感じです。当時はこれを骨の中に埋入して大丈夫なのか心配でした。今では色々なタイプの製品があります。もちろんこの時には歯科用の物はありませんでした。

利点

・骨の中に埋入したアンカースクリュウから動かしたい歯を牽引する。

抜歯した場所にゴムなどを用いて歯を後方に牽引します。牽引した後に乱杭になっている前方の歯を排列します。この写真にあるように抜いた場所の手前にある第一小臼歯を第一大臼歯で牽引します。第一小臼歯は後方へ、第一大臼歯はわずかに前方へ移動します。綱引きと同じです。歯の大きさから第一小臼歯は第一大臼歯よりも多く移動させる事ができます。第一大臼歯をまったく前方に動かしたくない時にアンカースクリュウが適しています。第一小臼歯とアンカースクリュウの綱引きなら第一大臼歯は前方へ移動しません。これがアンカースクリュウの役割です。従ってどの症例にも必要という物ではありません。

・手技は容易です。

難しいと思われがちですが、簡単です。イメージは板に木ネジを入れる感じです。麻酔をしてエンジンドリルで入れる場合と手でねじ回しで入れる場合とあります。2つの違いはドリルで入れる場合は狭い場所、手では入らない場所に埋入する事が可能です。それ以外にも大掛かりな手術が必要な場合もありますが、これは口腔外科医の助けが必要です。現在はあまりやられていません。

 

欠点、リスク

・外科的な処置が必要

アンカースクリュウは麻酔し特殊な工具を用いて骨の中にネジを埋入します。スクリュウによっては頬骨に埋入する物もあります。場合によっては手術が必要です。ネジの破折、感染の怖れはあります。一般的な外科処置の欠点です。

・力が強くなる事があります。歯根吸収の危険性が増大します。

矯正力が強くなりすぎると、歯根吸収や歯肉退縮の原因になる事はすでに証明されている事です。アンカースクリュウはまったく動かない移動しない装置です。一般的な歯と歯の間をゴムなどで牽引する場合はお互いの歯が移動します。従ってアンカースクリュウと歯で牽引する場合はこの半分の弱い力でおこなう必要があります。それを怠ると強い力が歯に加わる事になります。アンカースクリュウを使用すると早く歯が動く。もしこんな事が言われているのなら、歯根吸収も起きています。

・歯の移動速度は変わらない。

アンカースクリュウを使用すると治療期間が短くなると思われている患者様がいます。そんな事はありません。歯に加わる力は同じです。移動速度は変わりません。

・費用が高い

矯正治療の料金は大きくわけて施術料と毎回のチェック料金に分かれているのが一般的です。装置代金は施術料に含まれています。ところがアンカースクリュウは別料金を請求される事が多いようです。1本5万円とするとプラス20万円となります。もちろん治療後にはアンカースクリュウは除去して捨てられてしまいます。費用が請求できるから使用しているという歯科医もます。これはよくないですね。本当に必要な時だけにしてほしいです。

・牽引したい方向以外にベクトルが発生します。

 

術者としてもっとも困る点です。この図のようにアンカースクリュウは必ず骨の中に入れなければなりません。どこの骨でも可能というわけではありません。硬さと厚みのある部分にしか埋入できません。口蓋骨に埋入した場合は後方と上方にベクトルが分かれます。後方移動はしたいが、上方に移動したくない場合は使用できません。これと同じように埋入させる骨の位置によっては、歯を側方に移動する方向のベクトルが発生したりもします。歯列の側方拡大や狭窄が起きてしまいます。

アイ矯正ではアンカースクリュウは使用していません。その理由を説明します。

・リンガルブラケットを用いた歯の移動はもともとアンカーが強い

この図はリンガルブラケットでの歯の移動を表しています。リンガルブラケットは接着位置が内側にあります。そのために自然にも後方に回転するような力が発生します。一般的な表側の力では歯は逆の回転を起こします。これだと前歯は前方回転を起こし、臼歯を前方に牽引してしまいます。これにはアンカースクリュウは有効です。話を戻します。リンガルブラケットは歯が後方に回転するので大臼歯を後方に押す事になります。これによって大臼歯は前方に行きにくくなります。これがアンカースクリュウを使用しなくてよい理由になります。少し専門的な説明になりましたが、私たちアイ矯正がリンガルブラケットには必要しない根拠がここにあります。

・外科処置を避ける

根本的に歯を抜く、顎の骨を切るなどの外科的な処置は極力避けたいものです。必要最小限を基準に考えています。他の事で代償できればおこないません。外から自分の体ではない物を入れる事はそれ以外に解決できない最終手段だと考えています。結果、アイ矯正ではアンカースクリュウを使用しなくなりました。

・脱落や破折の怖れがある

破折に対する対処はアイ矯正ではできません。骨の中で折れたスクリュウを取り出す事は大変です。おそらく矯正専門歯科医院ではできないはずです。外科的な準備が整っていません。そこで口腔外科がある病院への搬送する事になります。また薬剤、麻酔薬などには期限があります。すべての患者様にアンカースクリュウは使用する必要は絶対にありません。そうなると廃棄する事になります。

 

 

 

私どもアイ矯正歯科は “見えない矯正治療” に特化した矯正治療を目指しています。従って外側にアンカースクリュウを埋入する事はできません。スクリュウが見えてしまいます。以前は使用していた時期もありましたが、現在はまったく使用していません。

 

 

福井 只美
 

このブログの執筆者
福井 只美医師(日本矯正歯科学会指導医・認定医)

リンガルブラケットについては長年の経験があり、
自身で開発したダブルワイヤーテクニックを用いた治療を得意としております。                
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