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ドクターズブログ

歯の構造 矯正治療による歯の移動 矯正治療のリスクとその副作用

歯の構造

エナメル質

歯冠部をおおっている組織がエナメル質です。これは体の中でもっとも硬く、削っても痛みを感じません。この部分はわずかな量なら削合する事が可能です。歯を抜くまでの場所は必要ないが少しは場所が必要だという時にディスキングというのはこれになります。無麻酔で削れます。痛みを感じるようならその下の象牙質に達したという事です。ディスキングする事によって場所を作る事ができます。ただし、わずかです。

象牙質

エナメル質の内側に明るいピンク色に見える部分が象牙質です。この象牙質は知覚があります。最近テレビのCMのせいか知覚過敏の事を患者様に聞かれる事があります。知覚過敏はこの象牙質の部分が露出する事によって起きます。病気ということではありません。歯茎が下がると象牙質が露出します。力ずよくブラッシングしたりすると起きる事があります。知覚過敏は特に生活に支障がなければそのまましておいてもかまいません。

歯根膜

歯根部の外側に黒い細かな線がいくつも走っている部分があります。これが歯根膜です。歯根膜はコラーゲン繊維や多糖類で満たされています。歯のクッションの役目を果たしています。この部位が矯正治療による歯の移動には重要です。この歯根膜が正常で健全なら矯正治療は可能です。この部位に歯の移動を促す細胞が出現します。

歯 髄

象牙質の内側にあるピンク色の部分が歯髄です。“神経がない”とか“神経を取った”と言った表現をする患者様がいます。これはこの歯髄の中をかきとって別の人工的なもので置き換えた事を言います。一般歯科ではもっとも重要な治療になります。どんなにきれいな物をかぶせても歯髄の治療がしっかりできていないと将来化膿したりします。歯髄を除去したような歯であっても歯根膜が健全なら矯正治療は可能です。差し歯などでセラミックでかぶせたような歯も矯正治療は可能です。

骨性癒着(アンキローシス)

骨性癒着は矯正治療の天敵です。歯が移動しないばかりではなくその歯も将来失ってしまう可能性が高いです。原因は外傷によるものがほとんどですが、原因不明の場合もあります。外傷で歯根膜が傷つきますその修復過程で歯根と骨が歯根膜を介さずに癒着してしまいます。その癒着によって歯は移動できなくなります。骨はいずれ歯根を吸収して取り込みます。歯根がなくなってきます。最終的には歯冠部だけが残ります。

歯の歯根部が吸収されて短くなっています。骨性癒着の初期にはレントゲン写真上に現れてきません。そこで発見できない事があります。問診で“前歯をぶつけたことがありますか?”と聞くのはそのためんです。歯科医になって30年以上経ちましたが骨性癒着に出会ったのは4例です。それほど少ないです。画像にも映らない初期状態で発見するには歯を叩くとわかります。金属音がします。正常な歯とはまったく違います。歯根膜がないので歯と骨という硬い物で音ができます。この歯は矯正治療による抜歯対象になります。外傷歯や移植した歯などに見られます。

矯正治療による歯の移動

歯に矯正力を加えると歯根膜が圧迫される部分と反対側は牽引される。引っ張られた部分に分ける事ができます。では圧迫された部分では何が起きるのでしょう。健全な歯根膜組織での血液の循環を維持する矯正力が適しています。従って強い力を加えて歯根膜内の毛細血管の血流が止まってしまうとそこから栄養をもらっていた組織が壊死してしまいます。その壊死してできた変性組織を貪食系の細胞が出現して処理するまでは歯は移動しません。健全な矯正力は毛細血管をつぶさない程度の力という事になります。弱いくて持続的な力になります。圧迫された部分の循環が維持されていると破骨細胞が出てきます。この破骨細胞がどこから来るか?というのはまだ正確にはわかっていません。血液由来ではないか?と言われています。この多核の巨細胞である破骨細胞が骨を吸収して歯が移動していきます。牽引側では骨芽細胞が出て来て今度は骨を作ります。骨の吸収と形成が起きて歯は骨の中を移動していきます。この代謝を維持する事が矯正治療による歯の移動には重要です。

 

Yamane A, Fukui T. In vitro measurement of orthodontic tooth movement in rats given beta-aminopropionitrile or hydrocortisone using a time-lapse videotape recorder. Eur J Orthod 1997; 19(1): 21-28. academic.oup.com/ejo

矯正治療期間短縮につながる歯の移動を速める薬

もう20年以上も前の話です。骨の代謝を活性化させるような薬が出てきた頃の事です。例えば骨粗鬆症の薬として脚光を浴びた活性型ビタミンD3などがそれです。他にもプロスタグランジンなどもありました。これを局所に投与すれば歯は早く動くのではないか?矯正治療期間の短縮になるのではないか?という事が研究されました。ところが投与した薬をそこに留めておくことが難しい。あるいは歯根膜の幅が狭く直接投与するのが難しい、来院時に毎回注射するのには問題がある。などの理由で実現しませんでした。またこれらの骨代謝を活性化させるような薬を全身に投与して歯の移動速度を速めるというのは実際にはできません。全身の骨に作用してしまいます。期待されていましたが、薬による歯の移動速度の加速は不可能でした。今も歯の移動を速くするという事はできません。早く治る?これは虚偽の広告です。ご注意ください。

下顎安静位があるから歯は移動できる

噛んでいる歯が矯正治療で移動できる?とうのは考えてみると不思議な感じを受けると思います。噛む力は数10キログラムです。体を支える事すらできると言われています。ではなぜ歯は動くのでしょうか?実は人が噛んでいる時間は一日の中でごくわずかだと言われています。食べている時ぐらいでしょうか?下顎安静位というのをご存知でしょうか?下顎骨には咀嚼筋(咬筋、内側翼突筋、側頭筋、外側翼突筋)などの下顎を挙上す筋肉群があります。これに対してお口を開ける時に働く下制筋群があります。この両方の筋肉がともに働いていない、活動してない位置を言うのが下顎安静位になります。一日の内でもっとも長い時間過ごしている位置になります。“ぼっと していると口が開いている”それはまさに下顎安静位になります。この噛んでいない位置で過ごす時間が長いので矯正治療が可能になります。もし噛んだままなら矯正治療は不可能です。とても噛む力に対抗して歯を移動できるなどというのはできません。歯を移動させる矯正力は数10グラムです。反対咬合(下顎前突、受け口)の方が上顎前歯が前に出て、あるいは下顎前歯が後方に移動して治るのもこの下顎安静位があるからです。下顎安静位は人によってことなりますが、前歯で2~3㎜程度開いた状態だと言われています。もしすべての歯を失って入れ歯になったとします。どこでその入れ歯の高さを決めるか?これが下顎安静位となります。下顎安静位で入れ歯を制作します。夜寝散る時はまさに長時間下顎安静位となります。この時間は矯正治療にとって重要です。

矯正治療のリスクとその副作用

歯根吸収

矯正治療にはよい事ばかりではありません。記載してきました。過剰な矯正力が加わると強い痛み、さらには歯根吸収という事があります。矯正治療の最大の副作用はこの歯根吸収だと私たちは考えています。歯根吸収のメカニズムが完全に解明されているわけではありません。しかし、歯根吸収が起きやすい条件というのはわかっています。

 

(1)脆弱な歯根尖、歯根の形成が悪い歯があります。治療する前の精密検査では必ず歯のレントゲン写真を撮影します。歯根の形態や歯根の長さは人によって、さらに歯によっても違います。歯根が長く太い健康な歯根をもつ人ばかりではなく、レントゲン写真上で不鮮明で輪郭のはっきりしない、細い湾曲した歯根の歯は歯根吸収のリスクが高いです。そういった場合はアイ矯正歯科クリニックでは歯根の脆弱な部分は歯根吸収のリスクが高い事を説明し了承を得る事にしています。またより弱く持続的な力を加えて治療します。

 

(2)骨の皮質骨などに近接している場合

歯根は表面をセメント質、内部は象牙質です。骨に比べて硬い組織ですが、骨も海綿骨の中を移動しているだけならば歯根吸収が起きるとは考えにくいです。しかし、骨の表層の硬い皮質骨にぶつかるような位置、あるいは移動が予想される場合は歯根吸収が起きやすいです。硬い物にぶつかるという事をイメージして頂くとご理解しやすいかたと思います。

 

(3)歯の移動距離が大きい

歯の移動距離が大きい場合は注意が必要です。上顎前突や上下顎前突など前歯部を後方に移動する量が大きいと歯根吸収のリスクは増します。ゆっくりとさらに弱い矯正力で移動するように努めます。

 

これ以外にもよくわからない物もあります。しかし、重篤な歯根吸収のために歯を失う。あるいは治療が必要になるという経験はありません。そこまでの歯根吸収は起きません。その点はご安心ください。私が考えるには歯を移動させると圧迫側の骨の表面には破骨細胞が出現します。これが骨を吸収して行くことによって歯は移動します。しかし、実は破歯細胞も出現するのではないか?と考えています。しかし、歯根はセメント質で守られている事、歯根の象牙質は歯に比べて硬い事などから破歯細胞は容易に歯根を吸収する事ができないと考えています。破骨細胞と破歯細胞ともに多核の巨細胞です。同じ細胞なのか?と思う事もあります。

歯肉退縮

歯茎(はぐき、歯肉)が下がると言った事が言われる事がありますが、直接的歯肉にアプローチしているわけではありませんので原因はよくわかっていません。治療前から骨量が少なく歯肉の退縮が見られるような場合は特に矯正力を弱めにする事、ブラッシングを強く行わないように指導します。

ブラックトライアングル

歯肉退縮とは違うのですが歯と歯の間に三角形の隙間ができる事があります。これは特に前歯部に見られます。この原因として考えられうのは歯の萌出と供に歯槽骨も成長します。しかし隣の歯と叢生(乱杭歯)になっている場合は歯槽骨が本来の成長ができずに低い位置にとどまってしまいます。そのために歯が排列した時にその成長できなかった部分が三角形の空隙となります。特に歯の形態によっては強調されます。歯の最大豊隆部は歯冠の切縁よりわずかに下の位置にあります。そのために歯が排列した時に下の部分に隙間が開いてしまいます。これを解決するにはその最大豊隆部をデイスキングしてあげることによってブラックトライアングルの量が減少します。

う蝕(虫歯)

ブラケットが歯面に接着されているとそのブラケット周りにプラークが付着します。このブラケット周りから歯が溶けて虫歯になります。特に従来の唇側にブラケットを接着している場合は注意が必要です。これは唇とブラケットが密着しているためにプラークが停滞しやすいです。ただし、リンガルブラケットの場合は問題はありません。実は現在までリンガルブラケットの周りからう蝕になったという経験は私には一度もありません。これは歯の舌側には空間がある事、舌が存在してい事、唾液の出口が近くにあることなどが影響していると判断しています。

歯の動揺

矯正治療中の歯は指など押すとグラグラと揺れます。“抜けちゃいませんか?”と聞かれる事があります。大丈夫です。矯正治療では歯は抜けません。なぜ歯が動揺しているか?と言うと、それは移動しているからです。上記のように骨を吸収しながら一方では作っています。それで歯の中を移動していきます。支持力は1/3ぐらいに減少すると私は思っています。この動揺は歯の移動を終えて2週間もすればおさまります。大学院時代に研究していたのがこれに関連した事でした。矯正治療と歯根膜の機械的強度を計測していました。

Fukui T. Analysis of stress-strain curves in the rat molar periodontal ligament after application of orthodontic force. Am J Orthod Dentofacial Orthop 1993; 104(1): 27-35.www.ajodo.org/

 

Fukui T, et al.  Restoration of mechanical strength and morphological features of the periodontal ligament following orthodontic retention in the rat mandibular first molar. Eur J Orthod 2003; 25(2): 167-174. academic.oup.com/ejo

 

私は矯正治療のリスクとか副作用はほとんどおきないと思っています。きちっとした精密検査と診断をしていれば予期せぬ事態に遭遇する事がないからです。矯正治療は治療前に顔のレントゲン、顎関節のレントゲン、歯のレントゲン、歯型など多くの資料を取ります。またそれを観察し、測定します。これは医科、歯科のすべての科を含んでも治療前にこれだけの検査を必要とする治療はありません。調べられる事はすべて調べる。その上で診断、治療をおこなっていきます。その結果、よく計画されたもっとも安全で確実な治療になります。従って偶発的な事はおきない治療になるからです。それでも抜歯依頼は慎重に出します。必ずレントゲンを再度確認します。さらに抜く歯以外の歯にはすべてブラケットを接着します。これによって歯を間違って抜歯するリスクがなくなります。人には“魔が差す”という事があります。誤抜歯(ごばっし)という言葉があります。依頼した部位と違う歯を抜いてしまったという事です。これを防ぐためにも抜く歯以外の歯にブラケットを装着します。時間をかけてゆっくり進む治療です。他にはない特殊な治療です。

 

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