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ドクターズブログ

アイ矯正歯科が重視する、矯正治療前のカウンセリングと精密検査

最初のカウンセリング

アイ矯正歯科クリニックでは始めて来られた患者様のまずはお口の中を院長、副院長が拝見させて頂きます。どこを治されたいか?どんな状態になりたいか?などを把握させて頂きます。院長、副院長ともに30年以上の矯正治療の経験があります。拝見した時点である程度のお口の中の状態が理解できます。その後、個室に移動して頂いて、約30分ほどお時間を頂いて、実際の治療例を見て頂きながらカウンセリングを行います。特にリンガルブラケット(裏側、舌側からの見えない矯正治療)については誤解されている事もあります。実際に一般的な表側矯正治療との違い、利点、欠点などを含めて丁寧に説明させて頂きます。その後に検査へと進む必要はもちろんありません。ご家族、友人と相談してください。あるいは他の矯正歯科医院に行ってみてじっくり時間をかけて考えて頂ければよいと思います。その上でアイ矯正歯科クリニックを選択してくださるとこの上ない事ではあります。“矯正治療は一生に一度の治療です。後悔なさらないようにじっくりお考え下さい。”とカウンセリングの最後に必ず言います。2度矯正治療をするぐらい無駄な事はありません。

 

残念な事に矯正治療はいまだに一般化したとは言えません。ご家族の中に誰も矯正治療の経験者がいないというのが普通です。そこでどんな治療をするか?正確なアドバイスは頂けない環境にあると思います。従って治療を理解して頂く上でも最初のカウンセリングは重要です。

初診時の精密検査

カウンセリング後に治療を決めて頂くと次は精密検査をおこないます。次の段階へ進みます。これが精密検査の内容にになります。

顔面写真の評価

まずはお顔の写真撮影をします。実は患者様の多くはお顔立ちを気にされています。特に横顔を気にされています。三方向から一定の距離で撮影します。どの患者様もおなじ条件で撮影します。正面像からはお顔に非対称性はないか?横顔からは中顔面の陥凹、突出、下顎の後退、突出を評価します。

横顔の評価

convexは上顎前突(出っ歯)、streatは正常、そしてcocaveは下顎前突(受け口、反対咬合)です。これ以外にも細かく所見を取ります。“上口唇が短い” “口唇圧が強い” “口唇閉鎖時にオトガイ部に筋肉の緊張感(梅干しのような筋肉の緊張)がある” お顔の曲がりなどもチェックします。患者様それぞれの特徴、治療に影響するような事を記載しておきます。

E-line (Esthetic line, エステティクライン)

矯正歯科医が使用している指標でよく知られている基準の一つにE-ライン(エステティックライン、Esthetic line)というのがあります。これは患者様の中にもご存知の方が多くいます。“エステティックラインをよくしたい”というご希望を耳にする事があります。鼻に対して口もとがどこに位置しているか?という事が評価できます。このE-ラインがよく用いられのには理由があります。実は他にも横顔を評価する方法はあります。しかし、鼻の高さに対してという評価法が日本人では重要になります。鼻の高い欧米人と違い、日本人は鼻の高さと口もとの関係を気にします。これがこの方法が日本で用いられる理由だと思います。

リケッツ(Ricketts)によって提唱されたものです。鼻尖とオトガイ部前端を結んだ線を言います。日本人で均整のとれた横顔は直線に対して下口唇が軽く触れ、上口唇が2-3㎜後方に位置すると言われています。しかし、白人は下口唇がこのラインの後方にあり、9歳で-2㎜、成人で-4㎜です。上のトレースの患者様は白人として正常ですが日本人として口もとが後方に位置しているという事になります。現在の日本人ではこれぐらいの横顔が好まれるかもしれません。欧米化?なのか、日本人の好みも変化します。

成人矯正の場合はこの横顔の改善が重要です。横顔を治したくて来院される方は大変多いです。そして歯ならびを治療する事によってかなり改善できます。

口腔内写真(こうくうないしゃしん)

お口の中の写真も撮影します。口腔内写真です。

口腔内写真の撮影には関する基準があります。側方からの写真は第一大臼歯(前から6番目)の歯が見える事、歯列弓を撮影する時には専用の鏡を使用します。舌が写らないように鏡の上において鏡で押さえながら撮影します。患者様も大変ですが、こういった診断用資料は正確に取らなければ意味がありません。いい加減な事をすればすべてに関して影響します。

 

臼歯部のかみ合わせや歯の出方、さらに今までの詰め物や歯の治療のあとなども記録します。抜歯する必要があればどの歯なのか?選択する材料になります。治療した事のある歯は抜歯する歯に選ばれやすいです。それはその歯の価値が低くなるからです。う蝕の治療は完全に治るという事はありません。悪い所を除去し、歯に近い材料で置き換える。しかし、現在でも歯と同じではありません。そこで数年するとその部分を取り換える必要がでてきます。

側面頭部X線規格写真(セファログラム)

世界共通規格で撮影する横顔のレントゲン写真です。実物の1.1倍で撮影されます。このレントゲン写真をトレースし、その上で顎の大きさ、位置、形態、歯の傾斜角度、高さなどを細かく計測し、日本人の矯正治療をおこなっていない正常咬合者のデータと比較して評価します。これは大変重要な行為です。しかし、ほとんどの患者様のデータは正常咬合者のデータには一致する事はありません。矯正治療のゴールは個性正常咬合だからです。個人、個人には色々な条件がすでにあります。その人にあった正常咬合がゴールになります。アイ矯正の院長は大学の助教時代に正常咬合者を男女100名ずつ集め基準値の作成を行いました。現在もこのデータは大学病院の基準値として使用されています。

他にも気道、舌の位置、アデノイドなどのリンパの肥厚などがわかります

Nagaoka (Fukui) K., et. al. (原著論文)
Normal standards for various roentgen cephalometric and cast model analyses in present day Japanese adults: Part 1. J Jpn Orthod Soc 1993; 52:467-80.日本矯正歯科学会誌1993年52巻467‐480

 

個性正常咬合とは

各個人の歯の大きさ、形態、顎の大きさなどが各個人で異なっています。これら条件下で構成される正常咬合は個性的な咬合を示す。これが矯正治療の最終的な目標となります。それぞれの患者様でゴールは違います。

正面頭部X線規格写真(P-A)

正面頭部X線規格写真(P-A)は正面から見てお顔の非対称性を判断します。お顔はどなたも完全には対称ではありません。しかし、治療の必要があるか?また治せるか?という判断をする必要があります。アイ矯正ではすべての患者様にも撮影しています。この患者様は下顎骨が右に偏位しています。治療には手術が必要でした。

最大開口時の顎関節の動き

最大にお口を開けた時に痛みがなく運動障害がない事が顎関節症を治療するか?どうか??の基準になります。単に音がする程度では以前は治療していましたが、現在は治療しない傾向にあります。それは顎関節は手や足の他の関節と違い、固定したり、人工的な物に置き換える事ができません。生命の維持に大変重要な関節です。そこで痛みがなく、機能していれば加療の必要はないという事になりました。最大開口時の上下前歯の切縁間の距離が約4㎝開ければ正常です。下顎頭は拡大図に示したように関節窩から前方に移動します。顎関節は前方に移動(滑走)するので口を大きく開ける事ができます。耳の穴の前方約15㎜程度の所に顎関節はあります。そこに指をあててお口を開ければ、下顎頭が前方に移動していくのを感じる事ができれば正常です。もし、異常な患者様がいれば口腔外科医に治療を依頼します。私たち矯正歯科医も顎関節の治療はおこないませんが、判断はできます。ご相談ください。

4分画顎関節撮影

顎関節の撮影です。右側の顎関節について輪郭をなぞってみました。顎関節窩と下顎頭です。咬合位(噛んでいる時)では下顎頭は顎関節窩の中におさまっています。しかし、最大開口時では下顎頭は関節窩から前方に大きくはずれています。はずれる事によって大きく口を開ける事ができます。これが正常像です。中央の2枚は咬合位(噛んでいる時)、横の2枚は一番大きく開いている時(最大開口時)の顎関節を表しています。それが左右で合計4枚になります。治療の必要があるかどうかは判断はさせて頂いています。私は以前はこの分野の研究もしていました。

Fukui T., et al. (原著論文)
Correlation between facial morphology, mouth opening ability, and condylar movement during opening-closing jaw movements in female adults with normal occlusion. Eur J Orthod 2002; 24(4): 327-336. academic.oup.com/ejo
―成人女性の正常咬合者における開閉口運動時の顔面形態と開口能力、下顎頭運動の関連性について― ヨーロッパ矯正歯科学会誌2002年24巻4号327-336

 

模型分析

A模型(初診時の模型)

歯の大きさや歯列弓の幅や長さなどを計測します。歯を排列するのにどれぐらいの場所が必要なのかを計測します。また歯列を拡大する必要があるか?あるいはそれが可能か?も計測します。

この模型は患者様から取った歯型から作っています。さらに変色や破損を防ぐために表面は油脂でコーティングしてあります。こうすると水などもはじいて長期保存が可能になります。矯正治療を始めると元の状態には戻れません。従ってこの模型は大切に扱われます。アイ矯正では現在治療中の患者様の模型はすぐに見れるように保管してあります。

 

overjet(オーバージェット)とoverbite(オーバーバイト)

上顎前歯は下顎前歯にかぶさっているのが正常です。このかぶさっている量を計測する事です。かぶさりの量、どれぐらい深くかぶさっているか?を計測します。overjet、overbiteともに正常値は約3㎜です。この値は模型から計測します。

歯冠幅径の計測

 

すべての萌出している歯のもっとも幅の広い部分(最大豊隆部)を計測します。これによって歯を排列するのにどれぐらいの場所が必要か?判断できます。

Arch length discrepancy(アーチレングスディスクレパンシー)

矯正治療で抜歯する必要があるかを判断するの一つの基準値になります。歯をならべる場所の大きさ(歯槽基底部)と並べる歯の大きさの合計を差し引いて算出します。例えば歯が大きい場合はマイナスになります。すきっ歯だとプラスになります。

歯槽基底、歯列弓の幅、長径の計測

歯槽基底という言葉は解剖学用語ではありません。矯正で使用する言葉です。歯の歯根尖部分の骨の事を言います。基になる部分といった所です。

ノギス、大坪のノギスを用いて計測します。

個々の歯の診査

パノラマレントゲン写真
このレントゲン写真で歯数の確認、親知らずの有無、歯の位置など全体的な確認が可能です。歯根の角度なども見る事ができます。

さらに必要があれば個々の歯についての小さなレントゲン写真を撮影します。

デンタルレントゲン写真。この写真はさらに1本ずつの歯の詳細な状態を観察できます。

咬合法(オクルーザル)と呼ばれている方向でのレントゲン写真です。歯列の形がわかると思います。フィルムを噛んでもらって頭の方向から撮影します。緑色の楕円は過剰歯(余分な歯)です。過剰歯が歯列の内側に埋まっている事が確認できます

 

歯の数が少なかったり、多かったあり、生えてきてなかったりと様々な問題があります。

CT 検査

さらに問題のある場合はCTでその位置を確認します。CTの撮影は口腔外科医に依頼しています。それは抜歯したり外科処置が必要になった場合は口腔外科医の所見が必要になるからです。外科医と連携をとります。そして結果を患者様にリスクを含めて説明します。緑色の矢印は埋伏過剰歯です。しかもこの歯は鼻にむかっています。これを逆生歯と呼びます。必ず抜歯するわけではありません。矯正治療のさまたげにならなければ抜かない場合もあります。歯の萌出には色々な事があります。

アイ矯正歯科クリニックでは院長あるいは副院長が約30分かけて最初のカウンセリングをします。その後にご希望があれば約1時間の精密検査をします。そして数週間かけて上記のすべての計測を終え、その資料を基に診断、治療計画作成をおこないます、患者様に詳しく、具体的に説明し同意を得てから具体的な治療に入ります。ブラッシングなど口腔内のケアもこの一連の治療行為に含まれます。

福井 只美
 

このブログの執筆者
福井 只美医師(日本矯正歯科学会指導医・認定医)

リンガルブラケットについては長年の経験があり、
自身で開発したダブルワイヤーテクニックを用いた治療を得意としております。                
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