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ドクターズブログ

機能性不正咬合とはどんな状態か。成り立ちや診断、治療方法について

機能性不正咬合

機能性不正咬合とは下顎の閉口路に何等かの障害があった場合、それを避けるように下顎を動かしたために反対咬合(下顎前突)、機能性片側性交叉咬合(きのうせいへんそくせいこうさこうごう)、上顎前突になったりします。この総称で機能性不正咬合あるいは機能的不正咬合と言います。

左から機能性反対咬合、機能性上顎前突、機能性片側性交叉咬合です。早期に治療すれば予後は良好です。重要なのは骨格性に移行させない事です。

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機能性片側性交叉咬合

このブログの中ですでに機能性反対咬合、機能性上顎前突は記載してきました。しかし、機能性片側性交叉咬合の記載はしていません。今回はこの不正咬合について説明を加えます。この不正咬合は特に早期治療が重要です

この患者様は6歳です。すべての歯がまだ乳歯です。黄色の線は上下の前歯の真ん中、正中を表しています。かなりずれているのがわかるかと思います。右側の乳犬歯が反対咬合になっています。これに対して左側は正常に被さっています。そのために下顎が右に偏位しています。検査の結果、その原因は下顎の右側乳犬歯にありました。また上顎の歯列弓の幅が狭い事もわかりました。片側だけ反対に噛んでいるというのが片側性交叉咬合と言います。前歯を反対咬合、臼歯の反対咬合を交叉咬合と言います。歯科用語は本当に難しいです。

黄色の枠で囲ってあるのが乳犬歯です。この乳犬歯は乳歯の犬歯です。この歯が長く見えます。この歯は挺出(萌出よりも伸びあがっている状態)しています。そして上の犬歯が内側で下の犬歯は外側にある。この部分は反対咬合になっています。ところがこの患者様の口を少しあけた状態で観察するためにファンクショナルワックスバイト法をおこなってみる事しました。すると上下の正中はぴったり一致しました。ご本人もこの位置を維持するのに不快感はありません。根本的な原因は上顎の歯列弓の幅が狭い事にありました。そのためにまっすぐに噛めずに下顎を左側に移動して避けて噛んでいたのが癖になっていました。治療は上顎歯列を拡大したところまっすぐ噛めるようになりました。

ファンクショナルワックスバイト法 (functional wax bite method)

厚めの歯科用ワックスを噛んでもらっています。軟化したワックスを噛んでもらう事によって乳犬歯が早期に当たり、下顎を右にずらす行為を除去してみました。この状態で前歯の正中線は一致しています。この位置が本当の位置だという事がわかります。噛んでいく時に左の乳犬歯が下顎を誘導して噛むためにずれたという診断ができます。これを機能性片側性交叉咬合と言います。

この状態はよい状態ではありません。上下の顎骨が成長するとさらに骨格の問題に発展していきます。顎が左右非対称に成長し、結果として顎が曲がってしまい、左右非対称の顔になってしまいます。

すでに顎の位置は非対称です。このままの状態で成人するともっとずれが目立ってしまいます。それは成長期前はお顔が丸顔ですが、思春期性の成長時期に下顎が成長します。お顔立ちも長くなります。そのために左右非対称が目立つようになります。

上顎の歯列を拡大して正常に噛めるようにしました。お顔も左右対称になりました。治療を成長発育とともに行った結果、骨格性の交叉咬合にはなりませんでした。

機能母体説 functional matrix theory

モス(Moss)によって提唱された顎顔面頭蓋の発育に関する説です。骨格の成長発育様式は遺伝的要因によるところが大きいとしていた。これに対してモスは骨格の成長は高度な適応能力をもっているとした。従って機能性片側性交叉咬合はそのままにしておくとその状態に適応してしまう。そのために顔面が非対称に成長してしまう恐れがあるという事になります。

こういった機能性の不正咬合は早期治療をする事によって骨格性不正咬合になる事を防ぐことができます。

この考えに基づいた治療装置があります。それが機能的顎矯正装置です。

機能的顎矯正装置

これは機能母体説を基にしている装置です。特にヨーロッパで生まれた装置です。アクチバトール、バイオネーター、フレンケルなど様々な装置があります。上顎前突に使用する場合は下顎の成長促進が目的です。

バイオネーター Bionater

この装置がバイオネータと言われる装置です。現在もっともよく使用されています。

日本人の典型的な上顎前突(出っ歯)です。下顎骨の劣成長が原因です。上顎前突と言っても実際には下顎後退というのがほとんどです。そこでバイオネータを使用して治療をおこなうことにしました。

バイオネータ装着前の状態です。

バイオネータ装着中

バイオネータを装着すると下顎が前方に位置させられます。この結果、下顎頭と関節との間に隙間ができます。そしてその隙間を埋めるように下顎頭が成長します。これは機能母体説を基にしています。

下顎骨の成長は下顎頭での軟骨性骨化によるところが大きいです。成長期の患者様にこの装置を装着させる事によって下顎は前方に成長します。これは機能母体説を基にしています。

バイオネータによる治療後

下顎が前方に成長したために横顔が改善しました。アイ矯正では7歳からの矯正治療を推奨しています。成長発育とともに治療していくことによって患者様にとってもっともよい結果を得る事ができます。

アイ矯正歯科クリニックでは遺伝的な要因はどの患者様にもにあります。これに関しては治療できない事もあります。しかし、すべてがそれで決まるか?というとそうではありません。最善を尽くすという点からはこの機能母体説を支持します。

頬筋機能機構 バクシネーターメカニズム Buccinator mechnism

バクシネータメカニズム 頬筋機能機構

Brodieが提唱しました。歯列は口輪筋と口角部で結びあっている頬筋によって包み込まれています。さらにその後方には翼突下顎縫線、上咽頭収縮筋と連なっています。これら外側を取り囲む筋肉群とそれに拮抗する舌の内側からの力の均衡がとれた所に歯列はあるというものです。これら内外からの環境が歯列の形態の保持に役立っている。これは私たちも支持しています。

・外部からくる筋力の弱い症例

この患者様は常に口が開いています。鼻呼吸がうまくできず口呼吸です。従って唇の筋力は弱く、前歯は前方に傾斜しています。そのために前歯は開咬(かいこう、open bite)になっています。

典型的な前歯部開咬状態です。

前歯部開咬

開咬とは、連続した数歯にわたって噛んでいない状態を言います。この患者様の場合は大臼歯だけが咬合している状態でした。唇の筋力は弱く食事中に前方に食べ物がこぼれるほどでした。

さらに前歯の先端には歯冠に溝が残っています。これは歯が萌出してきてからこれまで噛んだことがない事を示しています。歯は生えてきた時は必ずこうしてギザギザしているものです。しかし、噛む事によって削れて平らになります。その事からこの患者様はこの前歯がはえて来る6歳にはこの状態であった事が想像できます。さらに舌小帯が強直していました。

低位舌(ていいぜつ)

この状態だと舌は口蓋(お口の中の天井)を触ることはできません。従って正常な嚥下、あるいは発音がしにく状態です。舌が上にあがらない状態を低位舌(ていいぜつ)と言います。

異常嚥下壁(いじょうえんげへき)

白く見えるのはバリュームです。バリュームを飲んで頂いて液体が流れる状況を表示しました。赤い矢印が舌です。正常な方は飲み込む時に舌は上にあがり、口蓋(口の中の天井)との間で密室をつくり飲み込みます。しかし、この患者様は舌が上にあがりません。そのために舌を前後させて飲み込んでいます。これを異常嚥下壁(いじょうえんげへき)あるいは幼児性嚥下の残りと判断する学者もいます。どちらにしても舌は上下の前歯の間に出てきます。これがこの歯並びの原因になっている事は間違いありません。

こういった口腔機能の関わている不正咬合を治療が難しい部類に入れられます。ただ歯並びだけを治療しても治らないからです。私たちアイ矯正では筋機能療法(myofunctional therapy)を併用する事にしています。歯科衛生士が担当となり毎回達成目標を決めて正常な動作、飲み込み方などを指導しています。

舌突出癖(tongue thrusting habit)

舌に歯の裏側のあとがついている

少し舌に皺のようなあとがついています。これはお水を飲みこんだ直後の状態です。舌を歯の裏側に押し付けている証拠です。舌の正常な動きは学校でもまったく教えてくれないと思います。ご存知ないのが一般的です。何が正常ななのか?何が悪いのか?どうすればよいのか?何科に相談すればよいのか?是非、矯正歯科に相談ください。歯並びが影響を受けている事がほとんどだからです。

アイ矯正歯科クリニックでは歯の周囲環境をよく観察して治療をおこなっています。

こぼれ話

2002年の8月から1年間シカゴにあるイリノイ州立大学シカゴ校(UIC)に留学していました。矯正科の診療室の横には矯正学に関する書籍があり、修士課程の学生が調べものをしたり勉強したりするスペースがあります。小さな図書館といった感じです。その入り口に飾られていたのがBrodie. A. Gです。Brodieは長い間このUICの歯学部長でした。

頬筋機能機構 バクシネーターメカニズム Buccinator mechnismを提唱した事でも有名です。どうして?斜めから撮影したか?覚えていません。どうしてなんだろうか?

 

もう一人偉人を紹介しておきます。Graber T.M.です。彼は私がシカゴにいた頃はまだ元気でした。その後亡くなってしまいます。ご冥福を祈ります。Graber先生は矯正に関する本を何冊も出版されています。また、AJO-DOアメリカ矯正歯科学会誌の編集長を長年にわたって務めていました。私が滞在中は何度も私のラボに訪ねて来てくれました。親日家でした。この写真は、日本からおくられた勲三等の勲章を見せに来てくれた時のものです。外国人は勲三等が最高位なんだと聞きましたが私には縁のないものなので確認はしていません。それにしても勲三等の入ったおそらく塗りの黒い箱から“ほらタダヨシ見て見ろ”って感じで出しました。その黒い箱はおそらく彼はプラステックだと思っていたかもしれません。首に下げて記念撮影をしました。“勲三等は日本のエンペラーから直接授与されるんだが、私は高齢でもう日本へは行けないのが、残念だ。” 平成の天皇陛下から頂けるはずだったんですね。エンペラーという響きに驚きました。日本は王様ではなくエンペラーなんです。

 

 

 

福井 只美
 

このブログの執筆者
福井 只美医師(日本矯正歯科学会指導医・認定医)

リンガルブラケットについては長年の経験があり、
自身で開発したダブルワイヤーテクニックを用いた治療を得意としております。                
矯正
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